2018年1月から6月までのアメリカにおける特許訴訟は新しく1660件ありましたが、前年比で比べると15%もの減少です。
現在の知財環境
Unified Patentsのデータによると、アメリカにおける特許侵害訴訟案件は2015年のピークから徐々に減少しています。このような長期的なトレンドは、アメリカにおける知財権の権利行使の難しさが影響しているようです。特に、地裁における特許適格性(Patent eligibility)の問題や、 PTAB で行われる IPR などで以前よりも特許権を行使しづらい環境になってきています。
今後の通し
Unified Patentsのデータから、2018年に起こされる特許訴訟件数は3320件程度と予測できます。これは、2017年の3657件、2013年の6000件以上(今までの最高値)を下回る予想です。
PTABにおける再審査も減少
地裁における特許訴訟の減少は過去数年のトレンドなので、驚くことではないですが、訴訟の減少に応じて PTAB における案件も減少しています。2018年1月から6月までで、781件の再審査(Post-issurance reviews)が行われましたが、2018年の前半の1037件を大きく下回ります。(しかし、2018年後半の759件とほぼ同数です。)
IPR は地裁における特許訴訟と平行して行われる場合が多いので、納得できます。しかし、2016年や2017年の訴訟数が減少した際に、その年のIPRの件数の変化が見られなかったので、全体的に訴訟数の変化とIPRの数の変化には多少の時間差があるようです。Unified Patentの予測では、2018年のIPR件数は1563件で前年の1796件を下回る予想です。
未知数
この数字から見て取れないのは最高裁によるSAS判決の影響です。SAS判決はIPRの手続きに大きな影響を与えています。 PTAB におけるSAS判決の取扱や地裁における影響などが2018年の知財訴訟環境を変える可能性もあります。
NPE v. Non-NPE
United Patentsのレポートでもう1つ注目する点は、NPEによる特許訴訟とNon-NPEによる特許訴訟の数の差が大きく縮まったことです。2018年の予想では、NPEによる特許訴訟数は1692件でNon-NPEによる特許訴訟数は1628件です。ほぼ同等の数になります。アメリカの特許訴訟は近年NPEによる訴訟数が圧倒していたので、このような変化は大きなトレンドの変化と捉えていいでしょう。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Richard Lloyd. IAM (元記事を見る)