非自明性:部品のサイズの変更は自明なのか?

クレームの構成要件と先行文献の違いが部品のサイズに関わる場合、クレームは自明になるのでしょうか?今回はクレームされた発明が、先行技術の単なる部品のサイズの変更に過ぎないのか、それとも特許性が認められる発明なのかが争われた判例を紹介します。

2020年9月30日、特許審判不服審査会(以下「審査会」という)は、Ex parte Drozdenko(控訴番号2020-001293)において、In re Rose, 220 F.2d 459 (CCPA 1955)と「設計上の選択」(design choice)の誤った適用を理由とする審査官の自明性拒絶を取り消す決定を下しました。

Drozdenko事件で争われた請求項1はその代表的なものであり、以下のようにクレームされています。

A blade comprising:

an airfoil … including a body formed of an aluminum containing material;

a sheath … with a sandwich … including an outer adhesive layer adjacent the sheath, an intermediate [fabric] layer and an inner adhesive layer adjacent the body;

wherein said fabric layer is a woven fabric layer; and

wherein said woven fabric layer has holes that are less than .001 inch on average.

審査官は、先行技術が平均0.001インチ未満の孔を有する布層を開示していないことを認めましたが、審査官は、「孔のサイズが主張されていることは…設計上の選択の明白な問題であったであろう…そのような修正は、単なる部品のサイズの変更を含むであろう」と主張しました。サイズの変更は、一般的に当技術分野における通常の熟練度の範囲内であると認識されているとしました。 (In re Roseを引用)

しかし、この審理官の拒絶査定には2つの重大な欠陥がありました。第一に、クレームされた構造とそれが実行する機能が先行技術と異なる場合、自明な「設計上の選択」の認定からは除外されるということです。In re Gal, 980 F.2d 717, 719 (Fed. Cir. 1992)を参照のこと。そして、このケースでは、明細書は織布(woven fabric)を、より大きな穴を有する先行技術のスクリムと区別していました。

第二に、In re Rose は、以下の審査会が説明したように、個々の構成要素のサイズではなく、成形品の全体的なサイズの変化に適用されるものです。

ローズ事件では、控訴人は、クレームされた「木材のパッケージ」は大きく、取り扱いにリフトトラックを必要とすると主張したが、先行技術のパッケージ(比較的小さな木材片と窓枠のパッケージ)は手で持ち上げることができた。裁判所は、「この制限(すなわち、パッケージのサイズと重量)は、通常は発明の問題ではない対象物のサイズに関するものであるため、特許的には重要ではない」と判断した。

ここでは、対照的に、審査官は、検討中の物品(すなわち、ブレード(請求項1);エンジン(請求項11))の全体的なサイズの変更を提案していない。その代わりに、審査官は、明細書には密織布がスクリムとは異なる性能を有すると記載されているにもかかわらず、パーカーの織布(スクリム)の構造を、平均0.001インチ未満の穴を有する密織布の構造に変更することを提案しているのである。

平均0.001インチ未満の穴を有する織物を、先行技術に記載されているスクリムに置き換える他の理由を提示しなかったため、審査会は、審査官の自明性の拒絶を支持しませんでした。

教訓

ローズ事件の裁判所は、成形品の特定の構成要素のサイズが、残りの構成要素のサイズを変更することなく変更される修正を扱っていませんでした。それにもかかわらず、ローズ事件は、Drozdenko事件に類似した特定の構成要素のサイズ変更の自明性を主張するために、誤って適用されていました。したがって、ローズが拒絶反応に適用されるとき、最初のステップは、問題となっているサイズ変更が成形品全体のためのものか、それともその構成要素のみのためのものかを判断することです。後者であれば、審査官のローズへ依存するのは見当違いです。

最後に、「設計上の選択」が適用される可能性がある範囲では、サイズの変更が性能や機能の違いをもたらすかどうかを判断するために、明細書を参照すべきです。

解説

前回に続き「設計上の選択」(design choice)に関する判例を取り上げてみました。

今回は、前回と違い部品のサイズの変更に関わるものですが、根本的な「設計上の選択」(design choice)に関するアプローチは変わりません。つまり、クレームされた構造とそれが実行する機能が先行技術と異なる場合、「設計上の選択」を用いて自明性を示すことはできません。

今回は、この「設計上の選択」に関する問題が孔のサイズという部品のサイズの違いに誤って適用されてしまったというものです。

「設計上の選択」(design choice)という理由でクレームが拒絶されてしまった場合は、今回のEx parte Drozdenko(控訴番号2020-001293)や前回紹介したEx parte Elliottを参考にして、「設計上の選択」が正しく適用されているかを見極めてから拒絶対応を行うことをおすすめします。

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まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Beau B. Burton. Element IP(元記事を見る

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