「設計上の選択」を理由とする審査官の自明性の決定が覆される

「設計上の選択」は審査官にとって自明性を用いるために便利な言い分ですが、「設計上の選択」とされたところに発明の本質があり、明細書内で課題とされている問題を解決するのに重要な要素である場合、今回のケースのように「設計上の選択」を理由とした自明性を覆すことが可能かもしれません。

審査官は、特定の寸法、形状、または配置などのクレームされた特徴は、通常の技術を有する者にとって自明であったであろう「設計上の選択」(design choice)に過ぎないと主張して、「設計上の選択」に基づく自明性の拒絶を提起することがあります。 Ex parte Elliottで、特許審判不服審査会(以下「審査会」)は、「設計上の選択」に基づく審査官の自明性拒絶を検討し、審査会は、審査官がそのような判断を支持するのに十分な証拠や理由を提供しておらず、その一方で、控訴人の明細書は、引用された構造が記載された問題を解決したという証拠を提示していると判断したため、拒絶を取り消しました。

請求項1は、 Ex parte Elliottの控訴請求項の例示的なものであり、「内壁と少なくとも3本の支柱からなる内部支持構造」を含む特定の構造を有する食用動物用chewを対象としています。

審査官は、一次文献であるNieは押し出し式の動物用chewを開示しており、二次文献であるHeymanとTintleは、内壁と支柱を含む食用食品(アイスクリームコーンやパスタなど)を教示していると判断。したがって、審査官は、Heyman and Tintleで教示されているように、Nieの押し出し式動物用chewを「ペット用chewの設計のための製造上の選択肢として、内壁と支柱を備えることは自明であっただろう」と結論付けました。

しかし、審査会は、「[Heyman and Tintle]には、そこに開示されている支持構造を犬用chewに提供することが望ましいという教えも示唆もない」とする控訴人の意見に同意しました。

この中で、審査会は、クレームされた特徴の使用が、開示された代替案に比べて「明確な問題を解決せず」、「新規性も予想外の結果ももたらさない」場合には、デザインの選択による自明性の問題であると判断したIn re Kuhleを引用して、「先行技術の代替要素や構成が、予想外の結果もなく、クレームされた側面と同じ機能を果たす場合には、設計上の選択が自明性の根拠となる可能性がある」と指摘。審査会はさらに、「設計上の選択に基づく拒絶の文脈では、関連する問題は、クレームされた発明と先行技術との間の主張された相違点が『機能の相違をもたらすか、または予期しない結果を与える』かどうかである」と強調しました。

審査会は、被控訴人の明細書には、食用chew内の内部支持構造が「製品の1グラム当たりの持続時間が長くなる」と明示的に記載されていることから、引用された内部支持構造が、咀嚼(そしゃく)時間の増加やカロリー含有量の低減などの特定の機能を有することを教示していると判断しました。したがって、審査会は、控訴人の明細書が、引用された構造が記載された問題を解決したという証拠を提示していると判断。これに対し、審査会が指摘したように、審査官は、内部構造を有しないNieの動物用chewと、内部壁と支柱を有する控訴人の主張する動物用chewとの違いは、明らかな設計上の選択であったであろうとの判断を裏付ける証拠を特定することも、十分な根拠を提供することもできなかったと判断しました。

控訴人の明細書は、請求された特徴が記載された問題を解決したことを示す証拠を提示したのに対し、審査官は結論的な所見を提示したに過ぎなかったため、審査会は、「設計上の選択」に基づく審査官の自明性の拒絶を覆しました。

要点

「設計上の選択」に基づく自明性拒絶反応を扱う上で重要な問題は、クレームされた特徴とそれを実行する機能が、記載された問題を解決するかどうか、あるいは先行技術と異なるかどうかです。

 Ex parte Elliottが例示したように、設計上の選択と称されるクレームされた特徴によって提供される利益や結果の明細書での開示は、自明性に反している可能性があります。したがって、特許出願を作成する際には、出願人は、「設計上の選択」に基づく自明性拒絶の可能性に対処するために、該当する場合には、すべての発明的特徴の可能な結果、利点、および利点を含めることを検討すべきでしょう。

解説

今回のケースのように、審査官がPrimary referenceとSecondary refernceを「設計上の選択」を用いて組み合わせたり、Primary referenceでは開示されていない要素を「設計上の選択」として示し自明であると拒絶をすることがあります。

しかし、Primary referenceで開示されていないところに発明の特徴がある場合、その発明の特徴が問題を解決するために重要であることが明細書に記載されていれば、今回の Ex parte Elliottで特許権者が主張した方法で十分自明性を覆すことが可能です。

「設計上の選択」を用いた自明性の拒絶が多いようであれば、今回のケースを参考に、「設計上の選択」とされたところに発明の特徴を見いだせるかを検討してみてください。

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まとめ作成者:野口剛史

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