Confidentialという記載がなくても企業機密だと判断される場合もある

対象になった情報にConfidentialという記載がなかったものの企業機密を守るために合理的な処置がなされていたとして、訴訟の取り下げを免れた案件がありました。

S. Field Maint. & Fabrication LLC v. Killough, No. 2:18-cv-581-GMB, 2019 BL 28443, M.D. Ala. Jan. 29, 2019)では、連邦レベルの法律であるDefend Trade Secrets Act (DTSA)と州レベルの法律Alabama Trade Secrets Actの元、企業機密の搾取が訴えられていました。

企業機密の搾取(theft of trade secrets)の訴訟で必ず問題になる点は、企業機密の所有者(訴訟の申立人)が盗まれたとされる企業機密を守るために合理的な処置がされていた(“reasonable measures” to protect the purportedly stolen assets)が問題になります。

過去の判例ではConfidentialという記載がない文章に関してはそこに記載されている情報を守るために合理的な処置がなされていなかったとして、企業機密だと認められないこともありました。

しかし、今回は、Confidentialという記載がない文章であっても企業機密になり得るという判決を下しました。

ここでポイントになる点は、企業機密を守るために合理的な処置があったかどうかという判断は案件の事実により個別に判断されるということです。裁判所は更に説明を加え、雇用主が特定の情報を機密にしていることを従業員が知っている(もしくは知っているべき)である状況下であれば、企業機密を守るために合理的な処置がなされていると判断できるとしました。

今回の案件では、対象になった情報にはConfidentialという記載がなかったのもの、1)その情報がパスワード管理されたアクセスが制限されたサーバーに置かれていたこと、2)事業に関わるデリケートな情報は機密にする義務があるという書類に従業員が署名をしていたこと、3)申立人が従業員に対して今回対象になった文章の情報を機密にするように伝えていたことなどを総合的に判断して、企業機密を守るために合理的な処置がなされていたとしました。

教訓

今回はConfidentialという記載がなくても企業機密だと判断されましたが、それは他の活動が企業機密を守るために十分だったと判断されただけです。実際に企業機密を守るために合理的な処置がなされていたかというのは事実に基づくものなので、企業機密の扱いに関するポリシーを確立し、実際の業務でもポリシーに沿った情報の取り扱いをおこなうことが大切になってきます。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Steven Grimes and Shannon T. Murphy. Winston & Strawn LLP(元記事を見る



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