様々な企業のメタバース進出の準備が進む中、NFT(「non-fungible token」)にも注目が集まっています。技術面やマーケティングもさることながら、NFTとブランドを悪用から守るため、NFTを発行する(mintする)場合、事前にNFTの商標を米国特許商標庁(USPTO)に登録するのが得策です。そのため、今回はNFTトレードマークでやるべきこと、やってはいけないことをまとめてみました。
NFT商標の登録
NFTを発行する事業者は、USPTOに商標登録を申請することにより、自社のNFTに関連する知的財産権を保護することができます。商標とは、商品(ここでは「NFT」)の出所(ここでは「NFTを発行する業者」)を市場における競合他社から識別・区別するための「あらゆる語句、記号、デザイン、またはこれらの組み合わせ」です。連邦商標法は、第三者が商品/サービスの出所について消費者を混乱させる可能性の高い方法で商標を使用した場合、侵害を訴えることができるなど、商標権者に多くの保護を与えています。商標権侵害の立証に成功したNFTの商標権者は、例えば(1) 実際の損害賠償 (2) 侵害者の利益 (3) まれに弁護士報酬と費用
などを回収することができます。
有名NFTトレードマーク
NFTとブランドを保護するため、多くの発行業者は、NFTの商標とロゴをUSPTOに登録しています。例えば、多くのコアなファンがいることで有名な Bored Ape Yacht Club(「BAYC」)に関してはYuga Labs LLCというBAYCを発行しているところが2021年5月に商標出願しており、play to earn(遊びならがお金が稼げる)モデルでたぶん一番有名なゲーム Axie Infinity に関しては、すでにアメリカで登録済みの商標を開発元のSKY MAVIS PTE. LTDが所有しています。
模倣品の取締
2021年12月、2つのNFTコレクション、PHAYCとPhunky Ape Yacht Club(以下、PAYC)が第三者の発行業者からリリースされました。その直後、両プロジェクトは、NFTの最大手マーケットプレイスであるOpenSeaの著作権侵害に対するルールに違反したため、OpenSeaから追放されました。この取締は商標ではなく著作権の侵害ということで模倣品が対処されることになったのですが、別途、商標権を行使することも可能だと考えられます。
例えば、BAYCが商標侵害を主張し、それが訴訟に発展した場合、裁判所は、PHAYCとPAYCのマークがBAYCの商標に非常に類似しているため、消費者がPHAYCとPAYCのNFTの出所について混乱する可能性があるとして、PHAYCとPAYCがBAYCの商標を侵害したと判断する可能性があります。裁判所がこのような判決を下した場合、第三者の発行業者は、今後のNFTの鋳造および消費者への販売に関連して、紛らわしいほど類似したマークの使用を禁止されるなどの救済措置がとられることになります。
NFTプロジェクトに関連して他人の商標を使用しないこと
商標権者に付与される保護を考慮すると、発行業者はNFTの発行(minting)および販売に第三者の商標を使用する際に注意が必要です。NFTの作成に関連して第三者のブランド名、ロゴ、製品を使用したい場合は、まず書面による許可を得る必要があります。
NFTは現在非常に人気があり、マクドナルド、ニューヨークポスト、ナショナルフットボールリーグなどの伝統的な大企業が、それぞれの商標を組み込んだNFTを発行しているか、発行する計画を持っています。消費者が、第三者の商標を含むNFTはこれらの企業によって製造・発行されたものと考えるのは自然なことです。発行業者が適切な許可を得ずに第三者の商標を含むNFTを製造した場合、関係者が商標権侵害で訴えを起こす可能性があります。NFTの出所について消費者が混乱する可能性が高いと裁判所が判断した場合、発行業者は商標権侵害の責任を問われ、商標権者に多額の損害賠償を支払うよう命じられる可能性があります。
このようなリスクを考慮し、NFT発行業者は、第三者の知的財産を使用する前、または自身の知的財産権を登録・行使する前に、知識のある弁護士に相談するのがいいでしょう。