NFTと知的財産:USPTOと米国著作権局による共同研究レポート

米国特許商標庁(USPTO)と米国著作権庁(U.S. Copyright Office)は、NFTsの知的財産(IP)法および政策的意味合いに関する包括的な共同研究を発表しました。この研究は、デジタルおよびクリエイティブの世界におけるNFTsの急速な普及に対応するもので、著作権法、商標法、特許法の領域におけるNFTsの位置づけを明確にすることを目的としています。

知的財産権におけるNFTの定義

本研究で採用した定義によれば、NFTはブロックチェーン上に所有権が記録された一意の暗号トークンであり、資産や権利へのアクセスを提供するものです。この定義に従って、知的財産法におけるNFTの役割を理解し、NFTの創出、移転、使用に関連する知財の課題に対する研究結果が報告されています。

NFTと著作権

著作権法に関しては、特にNFTの創出プロセスに関して言及していました。

著作権で保護された作品に関わるNFTの発行(mint)は事実上、新たなコピーを作成するものであり、著作権者の独占的複製権を侵害する可能性があります。特に、NFTの発行が二次的著作物の創作とみなされる可能性があり、NFTにおける著作権法の運用の複雑さを指摘しています。さらに、オンチェーンかオフチェーンか、集中型システムか分散型システムかにかかわらず、NFTの保管方法も複製権に影響する可能性が指摘されています。また、NFT を通じて関連著作物を表示することが公の展示権に関与する可能性があること、そして、著作物がデジタルフォノレコードの場合、その市場での表示が録音と作曲の両方について公の演奏権に関与する可能性があることが指摘されています。

次にNFTにおける著作権の行使についての独自の課題を取り上げました。NFTのストレージは匿名で分散型であるため、侵害者の特定、管轄権の決定、侵害コンテンツの削除が複雑になることが懸念されています。デジタルミレニアム著作権法(Digital Millennium Copyright Act: DMCA)の通知・削除制度は、このような問題に対処する上で一定の成果を上げていると評価したものの、NFTの分散型保管と匿名性は、デジタル時代特有の課題ではなく、ブロックチェーン技術の性質によって拡大された課題だと認識しています。

更に、別の視点で、NFT技術を著作権の管理・運用に使えるかという点も検討され、4つの提案がありました。第一に、NFTを記録管理ツールとして活用し、創作物の出所や著作権の所有権を文書化するために用いること。これは、著作権情報の透明性とトレーサビリティに貢献するNFTの可能性を強調するものです。第二に、NFTは著作物の登録や関連文書の記録に関する著作権局のプロセスを改善または強化する可能性があると言及しました。第三に、NFTは再販権の実現を可能にする可能性があることを示唆しました。これにより、クリエイターは作品が再販されるたびに売上金の一部を受け取ることができます。最後に、NFTとスマートコントラクトの統合は、デジタル著作権管理(DRM)に有望な手段を提供すると発言しました。

商標とNFT

急成長するNFTの世界でも、商標は従来の市場と同様、商品やサービスの出所を示すという重要な役割を果たし続けています。し か し 、NFT市場の独自性により、商標法に新たな検討事項や課題が生じていると指摘してます。その対策として、米国特許商標庁(USPTO)は、商標IDマニュアルの中にNFT関連カテゴリーを含めるなどの取り組みを行うことで、変化に対応することの重要性を認識しています。この適応は、以下のような分類に見られます:

第9類:トレーディングカード、アートワーク、ミーム、スニーカーなど、広範なデジタルコンテンツをカバーする、NFTによって認証されたダウンロード可能な画像ファイル

第16類:NFTによって認証された物理的な絵画

第35類:スニーカーや絵画などNFTによって認証された商品の取引を促進するオンラインマーケットプレイス

さらに、第25類および第42類の最近の改正は、NFT市場の進化を反映したものであり、NFTが様々な分野で果たす役割が広く認識されていることを示しています。

このような分類や商標法におけるNFTの認知度の高まりにもかかわらず、明確かつ支配的な判例が存在しないため、この分野における商標保護については、不透明なままです。Hermès Int'l v. RothschildやNike v. StockXといった注目すべき判例は、NFTsと商標権との複雑な相互関係に言及し始めていますが、依然として不明確な点が多く残されています。特に、「混同の恐れ」は、従来の商標と同様、NFTに関連する商標紛争においても重要なテストです。NFT関連の商標侵害訴訟において、今後このテストがNFTに適用されることで、この新たなデジタルフロンティアにおける明確性と指針が示されることが期待されています。

商標権侵害や不正使用は、ブロックチェーン技術の非中央集権的かつ匿名的な性質により、NFTエコシステムにおける懸念事項として問題視されています。このような環境は、侵害行為を特定し対処する取り組みを複雑化させ、権利保護を求める商標権者に課題をもたらす可能性があります。このような問題に対しUSPTO は、商標とNFT の関係を一貫性、予測可能性、公平性をもって運用できるよう、NFT に特化した研修の提供に着手しているようです。

NFT市場における商標の歩みは、次世代デジタル社会がもたらす広範な課題と機会を象徴するものです。クリエイター、消費者、法律家、規制当局など様々な利害関係者がこれらの問題に取り組む中で、NFTの革新的な可能性を受け入れつつ商標法の原則を尊重する道を切り開くことが目指されています。

NFTと特許

NFT関連発明の特許性、特に適格性、新規性、非自明性、発明者の要件については懸念が指摘されています。しかし、多くのコメント提出者は、適格性に関する既存のガイダンスは適切であると考えています。NFT関連技術に特化した実用的な応用や技術的改善を提供するNFT関連のイノベーションは、単なる抽象的なアイデアと実用的な応用や技術的進歩を区別する101 条のハードルをうまく通過すべきであると主張しています。

また、NFTの意匠特許としての適格性や、特にThaler v. Vidalのような判例に照らして、NFTの創作における人工知能の複雑な役割についても議論されています。これは、特にAIが創造的プロセスにおいて重要な役割を果たす場合、技術の進化に伴う明確な発明者定義の必要性に関するより広範な議論を浮き彫りにするものです。

次に特許エコシステムにおけるNFTの活用は、特許ポートフォリオの管理と商業化を強化する有望な手段を提供すると期待されています。NFTは、その不変の性質とスマートコントラクトの技術力により、特許出願プロセス、ライセンシング、譲渡、およびより広範な商業化を大幅に合理化し、これらの側面をより透明で分かりやすくすることができる可能性があります。さらに、特許出願に不変のタイムスタンプを付与するためのNFTの利用は、特許出願プロセスの完全性を確保する画期的なアプローチを提示しているという見解を示しています。

関係者は、NFTとスマートコントラクトが特許ライセンスによるロイヤルティの追跡・管理方法に革命をもたらす可能性を指摘しています。この技術革新により、特許使用料の公正な分配が保証されるだけでなく、特許所有権の分有化の可能性が開かれ、特許収入へのアクセスが民主化されると期待されています。

また、米国特許商標庁(USPTO)は、ブロックチェーン技術そのものを活用して特許取得プロセスを簡素化し、コストを下げ、特許取得に関連する複雑さを軽減できる可能性があることを示唆する提案を行っています。また、このプロセスをより利用しやすくすることで、イノベーションを促進できる可能性もあります。ブロックチェーンの応用は、オフィスアクションの認証や特許譲渡の記録と検証にも及ぶ可能性があり、行政プロセスの信頼性と効率を高めることができます。しかし、このような技術統合は、ブロックチェーン技術に精通していない実務家を圧倒するような複雑性をもたらす可能性があるため、注意が必要だと指摘もしています。

今後の方向性と結論

今回のレポートでは、NFTは新しい課題を生んでいることへの一定の理解を示しましたが、現在の法的枠組みで、そのようなNFTが提示する課題に対処するのはは一般的に十分であると結論づけています。また、NFTを利用した知的財産権分野の審査・管理・運用において大きな可能性が示唆されているので、今後は知財の実務でNFT技術が用いられるようになっていくのかもしれません。結論として、米国特許商標庁(USPTO)と米国著作権局(U.S. Copyright Office)による共同研究レポートは、知的財産法におけるNFTの理解と扱いにおいて重要なガイダンスを提供するものとなるでしょう。

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