法務部門の変革:リーガル・プロセス・アウトソーシングの導入とその利点

コロナで働く環境が変わり国際・経済状況も目まぐるしく変わる中、作業重視の法務関係作業の外注であるリーガル・プロセス・アウトソーシングに注目が集まっています。慢性的な人材確保の難しさや限られた社内の法務リソースをより効率的に活用するためのアウトソースは今後も増えていくことが予想されています。

ポストコロナの経済環境で再注目されているリーガル・プロセス・アウトソーシング

リモートワークの増加、デジタル化とAIを含む技術革新、複雑な規制環境、そして多くのセクターにおいて、景気変動の中でコスト管理に改めて注目が集まっていることもあり、法務機能は大きな変革期を迎えています。

同時に、2023年におけるM&Aの見通しは複雑ですが、企業買収、売却、スピンオフが増加すれば、外部の専門的なアドバイスを得る必要があります。クロージング後のM&A紛争も、厳しい市場環境、インフレ、不況の可能性の中で、バリュエーション・ギャップが認識され、増加傾向にあると言われている。これらの作業はどれも社内の法務リソースを大幅に使う、とてもリソースヘビーな作業です。

しかし、法律関係の作業であっても作業重視(プロセス主導の業務)のものをサードパーティプロバイダーに委ねることで、社内の法務リソースを担保でき、ビジネスにとって重要で、より価値の高い優先事項に集中することができます。そのため、リーガル・プロセス・アウトソーシングの市場は伸びてきており、最近の業界調査では、2023年の世界のリーガル・プロセス・アウトソーシング市場は148億1000万ドルと評価されており、2027年には381億3000万ドルまで成長すると強気の予測が出ています。

リーガル・プロセス・アウトソーシングとは?

リーガル・プロセス・アウトソーシングと関連する企業向けサービスは、契約管理、コンプライアンス支援、企業管理、企業取引のデューデリジェンス、ビジネス・ライセンス管理など、プロセス主導型の業務をアウトソーシングすることです。

弁護士、コンプライアンス専門家、法務担当者の組み合わせにより、プロセス主導型業務のアウトソーシング先が特定されます。Wolters Kluwerが最近実施した調査によると、こうした意思決定の大半は法務担当者が行っています。

リーガル・プロセス・アウトソーシングを考える上での重要な点

事業ライセンスや事業管理といったプロセス主導型の業務は、企業の法務部門が企業の顧客に最適なサービスを提供する方法を決定するのに役立ち、場合によってはそのビジネスにとって不可欠なものとなります。また、契約管理などの重要な業務は、支払の受領から事業継続に至るまで、クライアントやサプライヤーに対する事業のリスクエクスポージャー(risk exposure)を決定するのに役立つ可能性があります。

さらに、リーガル・プロセス・アウトソーシング市場が成長を続ける中、Wolters Kluwerの調査は次のように予測しています:

  • アウトソーシングの推進要因として、コスト管理と従業員採用が50%以上を占めると予想される
  • ベンダーの選択に関しては、予算とコスト、経験、セキュリティが最も重視される
  • 規制リスクとコンプライアンス・サービスは、アウトソーシングが最も期待される業務
  • 企業が独自にアウトソーシングを決定するよりも、信頼できるプロバイダーが法務部門に特定の業務をアウトソーシングするよう促すこと多くなる

このように今後もリーガル・プロセス・アウトソーシングの増加が予想されるので、その動向は注意深く監視していきたいと思います。

参考記事:Emerging Trend: Will There Be an Exponential Rise in Legal Process Outsourcing by 2027?

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