2020年後半からITC調査案件が増加

コロナ禍で地裁における特許訴訟が滞る中、コロナに完全対応したITC調査が注目を集めています。2020年の前半は混乱があったものの、ITCのすばやいコロナ対策が功を奏し、リモートでコロナ前のスケジュールで手続きを行っています。特許権者にとって権利行使が滞るのは死活問題になりかねるので、今後もITC訴訟は増えるいくのではないでしょうか?


2020年の序盤はゆっくりなペースで進んでいた米国国際貿易委員会(ITC)ですが、その年の下半期には多くの新たな申立書が提出されました。12月には8件の新規クレームが提出され、結果として2020年に提出されたクレームの合計は57件となりました。ITCはCOVID-19に適応し、タイムリーに調査を終了させることができています。パンデミックの中におけるITC案件の増加は、ITCが知財紛争を解決するための信頼できるフォーラムであり続けているという訴訟当事者の自信を示しています。

ITCにおける第337条調査

ITC は、米国への物品の輸入における不正行為及び不正競争を調査し、対処するために、米国法典第 19 編第 1337 条(以下「第 337 条」)に基づく広範な権限を有するワシントン DC の連邦行政機関です。ほとんどの 337 条調査は特許侵害の問題を扱っていますが、337 条調査は、他の法定知的財産(商標、著作権等)の侵害や、企業秘密の不正流用、虚偽の広告、契約違反、独占禁止法違反などの他の不公正な行為にも対処することもできます。米国地方裁判所で訴訟を行う場合と比較して、ITC で特許侵害の主張を追求することは、法定要件によるメリットの迅速な解決、無関係の侵害者を 1 つの案件に含めることができること、反訴の可能性が限られていること、上訴で逆転される可能性が低いこと、および侵害品の米国への輸入を禁止する排除命令という強力な救済措置など、特許権者に多くの利点を提供しています。

COVID-19 危機に対する ITC の対応

3月の最初のCOVID-19対応計画から、ITCは、可能な限り中断なく337条調査を実施するための措置を積極的に講じてきました。すべての対面審問は延期され、いくつかの手続きスケジュールは延長されましたが、多くの調査は、修正された証拠開示のための行政規則および手続き規則を使用することにより、軌道に乗っていました。7月には、ITCはFedRAMP認定の安全なビデオテレビ会議ソリューショ ンとしてWebEx Meetingを選択し、企業秘密情報に関わる公聴会や会議を遠隔で進行できるようにしました。その結果、調査は概ね中断することなく進行し、遠隔での会議やヒアリングが行われ、ほとんどの調査は法定の割り当てられた時間内に終了しています。

2020年はITCにとって多忙な年だった

ITCは、特許権者のためのフォーラムとして有効であるにもかかわらず、米国地方裁判所と比較して申立を受ける数が限られています。その主な理由は、その管轄権の要件にあります。特許権者は、侵害の証明に加えて、(a)侵害に関連する物品の輸入、(b)特許を実施する物品に関連する「国内産業」の存在を証明しなければなりません。そのため、過去10年間を見てみると、ITCは年間平均49件の申立を受け入れて来ました。

しかし、2020年には57件の申立が行われています。他の多くのフォーラムと同様に、2020年の上半期はCOVID-19危機のために遅々として進まず、1月から6月までにITCに提出された新規申立は16件にとどまっていました。しかし、忙しい7月を皮切りに、下半期には41件の新規申立が提出され、12月には8件の申立が提出され、そのうち7件は12月16日以降に提出されたものです。

ITCにおける337条調査の将来

ITCは、現在のコロナ危機に適応できることを実証しており、知財権所有者は、迅速で信頼性が高く、正確な知財紛争の解決に定評のあるITCの評判に信頼を寄せています。現在の経済状況では、知財権者は、侵害している輸入品との競争に直面しており、市場での地位を維持し、成長させる方法を模索しています。2020年末に提出される申立の増加は、ITCが今後も市場シェアを守るために知的財産権を利用しようとする知的財産所有者にとって重要なツールであり続けることを示唆しています。

解説

コロナ禍で裁判所の機能が停止したり、知財以外の手続きが優先されるなどの影響で、地裁における特許訴訟には遅れが出ています。地裁で特許訴訟が争われる場合、陪審員による審議が一般的なので、コロナ禍で陪審員を集め、審議を進めるというのを各地裁が行うのはかなりハードルが高いです。しかし、裁判所での審議が遅れていても、侵害は継続している場合もあるので、特許権者としては、地裁での手続きがスムーズに進まないということは死活問題になりかねません。

そこでコロナにも早くから対応し、現在ではほぼコロナ前のスケジュールで結論がでるITCが注目されているのでしょう。ITCにおける調査を開始するには、侵害の疑いの他に特殊な条件を満たす必要があるので、場合によってはITCではなく地裁にしか持っていけない案件もありますが、コロナ禍の今、権利行使が必要で、ITCでも条件を満たせる場合、地裁ではなくITCで特許侵害を争う企業が増えてきているのでしょう。

しかし、2020年後半の伸びはすごいです。2021年もこの流れに乗ってITCにおける訴訟が増えてくると思うので、このタイミングで地裁だけでなくITCにおける手続きに関しても理解を深めた方がいいかもしれません。

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まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Adam Hess. Squire Patton Boggs(元記事を見る

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