ITC337条調査国内産業要件にITCコミッショナーが言及

ITC における特許侵害調査(337条調査)を行う場合、特許権者は国内産業要件(Domestic industry requirements)というITC調査独特の条件をクリアーしなければなりません。今回の判決では、生産活動以外の活動に対する出資(エンジニアリング、研究、開発)が、国内産業要件(Domestic industry requirements)の“significant investment in U.S. plant and equipment” や“significant employment of U.S. labor or capital”を満たすことができるということを明確に示しました。

ITC調査に関してはOLCでウェビナーを行ったので、概要はウェビナーのまとめページを見てください。

判決の重要性

今回の判決は、国内産業要件(Domestic industry requirements)に関する重要な判決です。この判決では、初めて、行政法判事(ALJ)ごとの産活動以外の活動に対する出資(エンジニアリング、研究、開発)に対する考え方の違いが示されています。

法律では国内産業要件(Domestic industry requirements)は以下の条件を満たすことで、クリアーできます:

. . .an industry in the United States shall be considered to exist if there is in the United States, with respect to the articles protected by the patent, copyright, [registered U.S.] trademark, mask work, or design concerned—

(A) significant investment in plant and equipment;

(B) significant employment of labor or capital; or

(C) substantial investment in its exploitation, including engineering, research and development, or licensing.

19 U.S.C. § 1337(a)(3)

ITCコミッショナーがALJの仮決定に言及

今回の調査では、国内産業要件(Domestic industry requirements)の(A)と(B)には、エンジニアリング、研究、開発などの生産活動以外の活動に対する出資が含まれるかが争点になりました。

特許権者であるBiTMICROは国内エンジニアリング活動として ‘customer integration and sustaining engineering activities,’ ‘customer service engineering activities,’ ‘warranty and repair work,’ ‘testing of replacement parts,’ や ‘preparation of responses to statement of work (“SOW”) requests’などを主張。

しかし、担当ALJ(Judge Lord)は、仮決定(initial determination)において、そのような非生産活動は国内産業要件(Domestic industry requirements)の(A)と(B)に含まれないとし、(A)と(B)は生産活動にのみ適用されるという限定的な見解を示しました。

ウェビナーでも説明された通り、ALJによる仮決定の後、ITCコミッショナーによるレビューがあります。このレビューにおいて、ITCコミッショナーは満場一致でALJの国内産業要件の分析を覆します。

the text of the statute, the legislative history, and Commission precedent do not support narrowing subsections (A) and (B) to exclude non-manufacturing activities, such as investments in engineering and research and development.

数ページに渡る分析の後、以上のような結論にいたり、国内産業要件(Domestic industry requirements)の(A)と(B)には、エンジニアリング、研究、開発などの生産活動以外の活動に対する出資が含まれることがはっきりしました。また、ALJは仮決定で、3つの国内産業要件すべてにおいて、特許の利用に関するアメリカでの投資が必要だと示しましたが、ITCコミッショナーはその見解も覆し、サブセクション(C)のみにそのような証拠を提出する必要があるとしました。この判決でITCコミッショナーはALJが下した最終決定には同意しましたが、その理由は以上のように異なる分析によるものでした。

コメント

今回の案件でなぜSubsections (A)と(B)の議論になったかは詳しくは書かれていませんが、上記のことがらは、今後のITCにおける国内産業要件を示す際に知っておいたほうがいいポイントだと思います。つまり、Subsection (C)で、国内産業要件を満たそうとすると、投資と特許の関連性を証明しないといけない(ということは、相手側は当然この「関連性」を否定してきます)。そうなると余計な費用も時間もかかります。
しかし、Subsections (A)と(B)ではそのような関連性を示す必要はないということが今回わかったので、投資で国内産業条件を示す際には、Subsection (A)と(B)も検討し、十分主張できるのであれば、(C)よりも優先して主張するという戦略も考えられます。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Bryan Schwartz. Squire Patton Boggs (元記事を見る

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