新しいルールでIPRが特許権者有利にシフトか?

今年1月8日からIPRにおける新ルールが追加されました。IPRとPRGのinstitutionに関するもので、今まで申立人に有利だったルールが変更され、専門家の証言がより「平等」に取り扱われることになります。この変更により専門家の証言を見合わせていた特許権者も、新しいルールにおいて専門家の証言を提出するかどうかを再検討する必要があります。


米国特許商標庁(USPTO)は、IPRを始めとするAIA訴訟手続において、新たなルールを追加しました。今回の規則変更により、特許権者間審査(IPR)と付与後審査(PGR)のルールが変更され、特許の弁護がより容易になることになります。この変更は2021年1月8日に発効しました。

IPRやPGRで特許に異議を唱えようとする申立人は、異議を唱えられた特許が無効であるという主張を裏付ける専門家の証言を提出することが勧められています。従来のルールでは、特許権者は、申立に対する予備的な回答として、独自の専門家の証言を提出することができました。しかし、USPTOは、IPRまたはPGRを開始するかどうかを決定する際(institution desicion)に、回答を得た専門家の証言によって生じた事実上の論争 (factual disputes) を「申立人に最も有利な観点から」(in the light most favorable to the petitioner) 考慮しました。その結果、特許権者は、予備的な応答を伴う専門家の証言の提出をしなくなるところが多くなりました。USPTOによると、以前のルールは「特許所有者に対する推定を避けるために、特許所有者が予備応答と一緒に証言証拠を提出するのを阻止していた可能性がある」とのことです。実際、旧ルールは、多くの特許権者が予備応答の提出を控えるようになったいくつかの要因の一つでした。

新ルールでは、申立人に有利な推定(presumption)は排除されました。予備応答の専門家の証言によって提起された事実上の論争は、もはや申立人に最も有利なものとして考慮されなくなりました。USPTOは、申立人が異議のある特許の少なくとも1つのクレームが無効であることを示す予備的負担を満たしたかどうかを判断する際に、すべての予備的専門家の証言を「証拠の全体性」の一部として考慮します。特許権者の専門家の証言は、証拠を総合してもクレームが無効であることを示す合理的な可能性がないことを示すことで、IPRやPGRの提起前に阻止するための強力な新しい武器となります。その結果、IPR/PGRを弁護する特許権者は、IPR/PGRの審理を阻止するために、予備的な回答で専門家の証言を提出するかどうかを再考する必要があります。

解説

現在のIPRのInstitution rateは50%後半です。IPRが開始(institution)されると、チャレンジされたクレームの最低でも1つが無効となる確率は非常に高いので、特許権者としてのIPR対策はInstitutionを阻止することです。

今回の専門家の証言に関する取り扱いの変更は、特許権者にとって有利なルール変更です。新しいルールにより、両当事者(申立人と特許権者の両方)の専門家の証言がほぼ同じように扱われるため、今後は特許権者が専門家の証言を得るようになるケースが増えることが予想されます。

そうなれば、申立人に有利だった専門家の証言がある程度「平等」に取り扱われることになるので、IPRが全体的に特許権者有利にシフトすることになります。

このルール変更が実際にIPRのInstitution rateを大きく変えるものかはまだ未知数ですが、2021年のIPRのInstitution rateには注目していきたいと思います。

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まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Kia L. Freeman and Thomas F. Foley. McCarter & English LLP(元記事を見る

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