知的財産ポートフォリオを保護する方法: 中小企業のためのヒント

中小企業であっても知財は無視できる問題ではありません。逆に大企業と戦ってのし上がっていくためには、大企業以上にすばらしい知財戦略の元、知財ポートフォリオを作っていく必要があります。今回はそのようなビジネスに使える知財を中小企業が作りだし管理するにはどうしたらいいのか3つのヒントを紹介します。

中小企業は、知名度や幅広い市場での存在感など、より確立された企業が持つ競争上の優位性を常に持っているとは限りません。少なくとも今のところはそうではありません。そのためには、できる限りの支援が必要です。組織の物理的および抽象的な創造物に対する強力な知的財産権の保護を設定することは、チームのハードワークを保護するために不可欠です。ここでは、知財をどのようにして着手し、継続していくかをご紹介します。

必要な知的財産保護オプションを理解する

まず、特許、商標、著作権など、ビジネスが作成したものに適用される知的財産保護の形態を決定し、次に、あなたの仕事に最も適した特定のアプリケーションを選択することから始めましょう。これらは国によって異なります。

米国の特許法では、物理的発明、デザイン、独自に育成された植物に関する特許、意匠、植物特許と、商標やサービスマーク、著作権の間で区別されています。

一方、欧州連合(EU)では、商標、著作権、工業意匠や一般意匠、特許、実用新案(短期間で安価な特許)、データベース著作権、ドメイン名、地理的表示(産地固有のワインに付けられたアペラシオンなど)など、より多くの可能性があります。

世界知的所有権機関(WIPO)の世界基準に基づいて知的財産を登録する場合は、ハーグ制度(意匠については90カ国で適用)、マドリッド制度(商標については122カ国で有効)、153カ国で支持されている特許協力条約(PCT)など、適切な手続きを選択しているかどうかを確認してください。

また、国際的なビジネスを展開する場合には、知的財産権の主なグレーゾーンを知っておくことも重要です。例えば、ソフトウェアは、ソフトウェアの作成者が責任を負う機械に直接関連するものでない限り、欧州加盟国では単独では特許を取得することができません。米国では、ソフトウェアがそれ自体ではなく、独自の方法や装置と連携して動作する場合、米国特許商標庁(USPTO)の裁量で特許保護を受けることができます。どちらの地域でも、ソースコードのみが著作権で保護されます。そのため、米国特許を取得し、ソフトウェアのPCT出願が承認されていたとしても、EUや他の様々な地域では適用されません。

あなたのビジネスは、たとえ広範な市場での存在感がなくても、連結したブランドを持っていなくても、物理的・抽象的な創造物を保護できなければなりません。最初からしっかりとした知的財産戦略を立てておくことは、将来の発展のために不可欠です。

後者の事実を考慮に入れると、中小企業が製品を直ちにまたは近い将来に輸出する計画がある場合には、PCT出願だけではなく、特定の国においても、それらの市場のすべてにおいて国内知的財産権を保護することが重要です。

知的財産の新規性の維持

貴重な知的財産を自分のために使用する可能性のある他者から遠ざけることは、適切な特許や商標の出願を完了させ、出願することに限定されるものではありません。また、保護したい知的財産について、公共の場、特にメディアへの公表を希望する場合には、組織内で必ず話し合う必要があります。これは、ほとんどの主要な知的財産規制機関において特許性を満たすための重要な基準となる知的財産の新規性を危険にさらす可能性があるからです。

しかし、このような議論は避けられないこともあります。例えば、貴社の主要なビジネスパートナーが、貴社と貴社の共同イニシアチブに参加するために、貴社のアイデアの要旨を知る必要がある場合などです。このような場合には、組織外のすべての関係者に、話し合いの内容を企業秘密として保護するNDA(秘密保持契約)への同意を求めるようにしましょう。また、保護しようとする知的財産がパートナー企業との共同研究に由来するものである場合には、知的財産の所有権がすべての当事者間でどのように共有されるかを明確に詳細に記載した書面による別の契約書が必要となります。

ポートフォリオの構成と評価

特許を取得した製品、デザイン、方法、商標などの知的財産のカタログができたら、それを整理して分類することが不可欠です。

保護の種類から市場流通(輸出製品と国内製品)に至るまで、すべての関連する基準を用いて資産間を区別することは、中小企業の成長に伴い、特にどの製品が最も投資収益率が高いかを特定する上で非常に重要な意味を持つでしょう。さらに、特に競争の激しい分野や法的紛争が発生しやすい分野で事業を展開している場合には、定期的に正確性と網羅性を監査することで、様々な意味で賢明なデューデリジェンスとなります。

解説

アメリカの中小企業は日本の中小企業と同じように知財に関心の少ないところもあり、また、そのために適切なリソースが割かれていない場合も多いです。そのため、このような啓蒙活動はとても大切になってきます。

今回のポイント3つは、1)ビジネスに重要な知財の特定、2)新規性の維持、3)知財の管理と評価です。

知財は形が見えない資産なので、まずは自分の事業で重要な知財を特定しなければなりません。当然のことながら、資産を特定しなければ正しい運用はできません。また、土地や工場のような有形資産のようにすでにあるものを管理・運営していくのではなく、適切な知財を自社の市場や今後の展開に応じて「世界展開」していかなければなりません。

また、どのようなものが「知財」と認定されるかは「地域差」があるので、ビジネスで使える強力な知財を構成するには、そのような地域差も知っている必要があります。

このように知財の特定には複雑な要素を考慮しないといけないので、腕のいい弁理士・特許弁護士と強力しながら、会社にとって重要な知財の特定をすることをおすすめします。

次の新規性の維持の問題。これは対外的な自社の活動のアピールや他社との協力など、外部とのコミュニティの時に問題になります。と言うのも、多くの国では、一度発明を一般に公開してしまうと、その発明に対する特許保護をうけられなくなる可能性があるからです。

これはプレスリリースや新製品やサービスの宣伝はもちろん、他社との共同開発でも同じような問題が発生します。知財に関する共同開発の問題は複雑なので今回は割愛しますが、他社と情報交換をする場合は、NDAはとても重要で、共同開発を行う場合、発生する知財の所有権を含めたJDA(Joint development agreement。共同開発契約)を事前に結ぶことをおすすめします。この点も、知財(特に特許)に精通した弁護士に助けを求めり、知財関連の契約に強い弁理士に相談するのがいいでしょう。

最後に、自社の知財の管理・評価です。知財は目に見えない「無形資産」に分類される会社の財産なので、その分しっかりとした管理・評価が求められます。特に競争が激しい市場では知財は大きな価値を生み出すことがあるので、戦略的に知財を生み出し・保護し・管理することが重要です。

また、知財には維持するために費用や労力がかかるものもあるので、定期的に評価をして、費用に見合った効果を得ているかも正しく評価することが重要です。

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まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Cornelia Peuser. Dennemeyer(元記事を見る

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