知的財産権デューデリジェンスの重要性とよくある勘違い

どのような技術であれ、知的財産は企業にとって重要な無形資産を形成することができます。自社の製品や活動を競合他社に模倣されないよう法的に保護することに加え、知的財産はライセンス供与や販売を通じて収益を生み出し、市場シェアを保護し、企業の研究開発投資に対するリターンを増大させることができます。したがって、知的財産は企業の価値を確立する上で極めて重要な役割を果たすものです。

知的財産を保有する企業への投資を検討する際には、その企業がどのような知的財産を保有しているかだけでなく、その知的財産が企業にどのような付加価値をもたらしているかについても、十分な理解が必要です。知的財産は単なる数字の問題ではなく、ポートフォリオ全体を評価するためには、各知的財産権の強みと弱みを理解することが必要です。その際に、これらの強みと弱みをタイムリーに評価する能力が極めて重要になります。

ここでは、デューデリジェンスにおいて企業の知的財産がどのように評価されるのか、また、よく遭遇する知的財産に関する誤解について説明します。

デューデリジェンス:知的財産権の確立

知的財産のデューデリジェンスでは、まず企業が保有すると思われる全ての登録された知的財産権及び未登録の知的財産権を特定する必要があります。特許は一般的に最も価値のある権利であり、企業の発明が他者に使用されるのを防ぐ、最も強力な保護を提供するです。商標も重要な役割を果たします。多くの企業は、コカ・コーラ、アップル、ナイキなどはその一例で、自社のブランドに関連する信用に大きく依存しています。これらの企業にとって、商標を通じてブランドに与えられるイメージを保護することは極めて重要です。また、企業秘密を保護するノウハウ、ソフトウェアを保護する著作権、データベースを保護するデータベース権など、特許や商標よりもあまり知られていない知的財産権に関しても、近年、その重要性が注目されてきています。

現在、ほとんどの企業が独自のソフトウェアを開発し、アプリを通じて顧客にサービスを提供することが一般的になっています。ソフトウェアは著作権で保護される場合があり、企業が権利を登録するために申請する必要がある特許や商標とは異なり、著作権は自動的に発生する知的財産権です。ソフトウェアの著作権保護は、特にオープンソースソフトウェアが使用されているかどうかなど、状況によって異なるため、どのような権利が適用されるか慎重に検討する必要がある権利になります。

また、サービス業はますます情報への依存度が高まっており、会社のデータベースに蓄積された顧客の詳細やその他のデータは、大きな価値を持つ可能性があります。また、自動取引、状況監視、AIなどのサービスを提供するために、過去やリアルタイムのデータをデータベース化することに多額の投資を行っている企業も多いです。これらの貴重な資源は、データベース権によって保護される可能性があります。

デューデリジェンス: 知的財産の評価

知的財産デューデリジェンスとは、どのような知的財産が保有されているかの単純な監査だけでは終わりません。知的財産の専門家が提供する知的財産デューデリジェンス報告書は、知的財産の長所と短所を評価し、知的財産の専門家でなくても理解できる明確な評価を提供します。

何よりもまず、会社が全ての知的財産を所有していることを確認することが重要です。特許は発明を対象とし、当初は発明者に帰属します。英国では、権利は自動的に発明者を雇用している会社に移転しますが、発明が共同研究の結果である場合には、複雑な問題が生じる可能性があります。また、知的財産の種類によって異なる所有権が適用されるため、適切な検討が必要です。

知的財産の有効性と、第三者による有効性への攻撃が成功するリスクも考慮する必要があります。知的財産ポートフォリオの地理的範囲や知的財産を行使する能力といった問題も重要な要素になりえます。

特許については、基礎となる技術を理解することが重要です。その特許は、その企業が開発・販売している製品をカバーしているのか、また、将来の開発についてもカバーしているのか、第三者が特許を回避することは容易か、は特許の評価に大きな影響を与えます。

よくある誤解

残念ながら、知的財産にまつわる誤解は数多く存在し、知的財産ポートフォリオの真の価値を誤って理解することにつながりかねません。

ここでは、よくある5つの誤解を挙げてみましょう:

  • 「特許があるから、発明を利用する権利がある」:  多くの企業は、知的財産権によってもたらされるものに対して誤った認識を持っています。実際、知的財産権は他者が何かをするのを阻止する権利を提供するのみで、何かをする権利を提供するものではないことです。企業にとっては、自社の活動を妨げる可能性のある他者の権利があるかどうかを判断するために、FTO(Freedom-to-operate)調査を実施する必要があります。
  • 「自社のアイデアは世界特許で保護されている」: この種の発言は正確ではありません。国際条約(特許協力条約)を通じて特許出願(PCT出願)をすることは可能ですが、これは「世界特許」につながるものではなく、保護を希望する国で個別の国内特許または地域特許に変換する必要があります。実際、多数の国に特許ファミリーを出願し、維持するコストは、通常、大規模な知的財産予算を持つ企業のみが選択できるもので、PCT出願でアクセスできるすべての国で特許保護を求めることは極めてまれで、おすすめできるものではありません。
  • 「当社の特許は当社製品の独占権を提供している」:これが正しいかどうかは、特許の正確な文言によります。  知的財産の専門家は、特許のクレームを分析し、競合他社が特許を回避して設計するのを防ぐために保護範囲が適切かどうかを判断する必要があります。また、特許ファミリー内の異なる国の特許が提供する保護範囲が異なる場合があるため、この分析は国ごとに行う必要があるかもしれません。また、特許が付与された後、その特許が最終的に何を保護するのかにも注意を払う必要があります。また、開発中に製品設計に変更が加えられると、その変更により特許が保護しようとした製品を実際にはカバーしていない可能性もありますので、注意が必要です。 
  • 「コンピュータ・プログラムでは特許を取得できないので、特許は出願していない」:この誤解のために、多くの機会が失われています。多くの特許庁で、年間数千件の特許がコンピュータ・プログラムに与えています。
  • 「特許が取れたから、競合他社を市場から締め出すのは簡単だ」: 知的財産権の行使は、簡単なものではありません。知財の侵害訴訟(特に特許訴訟)には多大なコストとリスクが伴います。通常、ライセンス契約やその他の契約によって紛争を解決することが望ましい選択肢であり、知的財産権の侵害を理由に競合他社を訴えることは最後の手段と考えることが望ましいケースが多いです。

これらは、企業の知的財産が、その企業やその企業への潜在的な投資家が考えているようなものではない可能性がある理由のほんの一部に過ぎません。多くの企業は、自社がどのような知的財産権を持っているのか、また企業価値を最大化するために知的財産権をどのように活用できるのかを十分に認識していません。実際、最近では多くの企業が、こうした問題を早期に解決しようと、定期的に、あるいは少なくとも投資プロセスの前に、自社の知的財産の見直しを実施しています。

結論

知的財産は、様々な技術分野において企業にとってますます重要な資産となっており、その正しい理解と管理は過小評価されるべきではありません。強みと限界を評価するデリジェンス・プロセスを通じてこの資産の価値を調査することは、投資プロセスの重要な部分です。

企業は、こうした強みと限界がどこにあるかを確認するために、デューデリジェンスを待つことを望まないかもしれません。早期の知的財産レビューは、企業の知的財産に対する理解を深め、適切な知的財産戦略を策定するのに役立ちます。適切かつ正しく管理された知的財産戦略を持つ企業であれば、潜在的な投資家が行うであろう知的財産デューデリジェンス調査に対して十分な準備ができます。

参考記事:IP Due Diligence – J A Kemp

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