Intent-to-use Trademark出願で気をつけること

アメリカでTrademark(商標)を取得する場合、原則その商標を実際に製品やサービスに使用している必要があります。しかし、まだ製品やサービスが準備段階の場合、いち早くその商標を取得するために、実際に使用する前に、Intent-to-use Trademark出願ができます。

USE-BASED APPLICATIONS VS. INTENT-TO-USE APPLICATIONS

アメリカにおける商標の出願には2つ種類があります。 1つ目は実際に使っている商標の登録、2つ目は、使う意思のある(intent-to-use)商標の登録です。1つ目の実際に使っている商標の登録は、登録したい商標を実際にビジネスの目的で使用していることが必要です。しかし、2つ目の使う意思のある(intent-to-use)商標の登録は、出願前に実際に、ビジネスの目的で使用している必要はなく、将来使う予定があるだけで出願できます

使う意思のある商標の登録が一般的な商標登録と違う点は、出願日が商標の国内優先日として認められる点です。例えば、1月15日に使う意思のある商標の登録を行います。しかし、その後、他社が3月1日に実際に使っている商標の登録を行います。次に、6月に使う意思のある商標で登録したものを自社製品の名称として販売し、それを証明する書面を特許庁に提出したとします。この場合、無事に商標が登録されれば、3月に申請した他社よりも権利が強い商標が取得できます。

商標を使う善意の意思(BONA FIDE INTENT TO USE THE MARK)

このように使用していなくても優先日を確保するのに有効な使う意思のある商標登録ですが、注意しなくてはいけない点もあります。出願の際に、出願したものを実際に商標として使う善意の意思をしめす認証された陳述書(verified statement)を提出する必要があります。通常、特許庁はこのような陳述書を質問することなく受理しますが、上記で上げた例のように他社が競合するマークを申請するような’場合、他社が商標を使う善意の意思を疑問視し、チャレンジすることがあります

このような場合、審議を行うTrademark Trial and Appeal Board (“TTAB”) が商標を使う善意の意思を示す客観的な証拠を求めてくることがあります。TTABはそのような提出された証拠を考慮し、最終的に商標を使う善意の意思があったかを判断します。判断はケース・バイ・ケースなのですが、過去の判例から以下のようなことがわかっています。

1.商標を使う善意の意思を示す客観的な証拠として認められず、登録が却下されてしまったケース

例:

2.反対に、商標を使う善意の意思を示す客観的な証拠として認められ、登録が許可されたケース

例:

  • 商標出願前にライセンス契約候補の組織と交わされたメール (See Hard Candy Cases, LLC, v. Hard Candy LLC, Opposition No. 91195328 (TTAB November 13, 2014))
  • 出願に記載されている商品に関わる継続的なビジネスがあり、商品の生産、または、商品のマーケティングが行われているという証拠 (See Lane Ltd., 33 USPQ2d at 1351 (TTAB 1994))
  • 商標が付けられる商品に対するパートナーシップやライセンスの交渉に関わる書類 (See Donald Reid v. Monster, Inc., Opposition No. 91218973 (TTAB Jan. 26, 2017))
  • 出願に記載された商品の試作品に関する書類 (上の判例から)
  • 出願に記載された商品のパッケージングの試作品に関する書類 (上の判例から)
  • 出願に記載された商品のビジネスプランとマーケティングに関する書類 (上の判例から)

ポイント

このように、使う意思のある(intent-to-use)商標の登録を行う場合、商標を使う善意の意思を示す何らかの書類を準備しておく必要があります。このような書類を用意していない状態で、他社が商標を使う善意の意思をチャレンジした場合、商標の登録ができなくなる可能性があります。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Matthew A. Barlow. Workman Nydegger(元記事を見る

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