AIがより身近になってきたことによって、AI関連の発明も増えてきています。そのため、AI発明をどのように評価し、どのようにして特許などの適切な知財保護を行うかは知財部門の大切な業務の一環になってきます。
元記事が長かったので、パートを2つに分けることにしました。パート1だけ限定公開中。パート2はTLC限定コンテンツです。
AIイノベーションは、機械学習の開発から、戦略的なトレーニングセットの選択、興味のあるAI技術から特定の結果を検出して使用することまで、あらゆることを網羅しています。
以下が「AI発明の特許性を評価するための5つの実践的ヒント 」の最初3つです。
1.AI発明の潜在的なタイプを特定する: (i) 新しいタイプのAIで、新しいアルゴリズムや改良されたアルゴリズム、またはアルゴリズムの組み合わせに関連するもの。アルゴリズムの例としては、線形およびロジスティック回帰アルゴリズム、自動化されたニューラルネットワーク、決定木、勾配ブーストアルゴリズム( linear and logistic regression algorithms, automated neural networks, decision trees, and gradient boosting algorithms)などが挙げられる。(ii) 問題解決のためにアルゴリズムがどのように適用されているかに関するAIの新しい応用。例としては、訓練データがどのように収集され処理されるか、アルゴリズムがどのように訓練されるか、アルゴリズムから出力され展開されるモデル、モデルの出力、モデルの出力が下流工程でどのように利用されるかなどが挙げられる。(iii) AI の支援を受けて行われたイノベーションであって、創薬、工業用化学物質の発見、新たなフィンテック・ソリューションの創出、新素材の創出、新製品の設計など、他の技術分野における発明の研究開発に AI を使用することに関連するもの。(iv) 人間の発明者がいなく、AIが発明した新しい発明(現時点ではAIを単独の発明者としてリストアップすることはできないため、最終的に発明を生み出す「発明の飛躍」に貢献する人間の発明者を含める必要がある)。
2.AIの特許適格性の問題:米国では、101 条判例法の継続的な進化により、特許の対象となる主題は常に変化しています。さらに、特許庁は、101 条の下での特許請求項を分析するための独自のトレーニングやガイダンス資料を作成し、複雑さを増しています。一般的に、現在のガイダンスでは、以下の場合、クレームは特許適格とされています。司法上の例外に該当しない場合。抽象的なアイデア、自然法則、自然現象(自然の産物を含む)、特許請求の対象となっている司法上の例外が実用化されている場合、特許請求の対象となっている司法上の例外が実用化されている場合、特許請求の対象となっている司法上の例外を大幅に上回る場合。新しいタイプのAIの発明やAIの新しいソフトウェア統合の発明の特許適格性は、ソフトウェア空間における特許適格性の進化の状況に大きく依存することになるでしょう。ソフトウェアの特許化に有利な判決が出れば出るほど、AI発明の特許適格性のための道筋がより多く作られることになります。対照的に、AIを用いて開発された、またはAIによって開発された発明の特許適格性は、発明の特定の分野に依存する可能性が高いです。
3.一般的に、AI発明の特許適格性を評価する際には、その技術が人々の生活以外にどのような改善を提供しているかに注目します。(i) モデルの選択や訓練によって速度や精度が向上しているか、コンピュータが以前はできなかった機能を実行できるようになっているか、(ii) 訓練データの生成やフィルタリングによって、より少ない計算資源を必要とするモデルや処理速度が向上しているか、(iii) 特定のパラメータや特徴、閾値が処理速度の向上やネットワークの遅延の低減にとってより重要であるか、などです。脳内で合理的に実行できない操作(operations that cannot reasonably be performed mentally)および/または特定された改善に具体的に寄与する操作(operations that specifically contribute to the identified improvement)を記載したクレームを作成できるかどうかを判断します。例えば、AIシステムを実行するコンピュータの動作などの「コンピュータ技術」を改善する、またはAIシステムを実装する診断テストの精度または精度などの「精度」を改善するような特徴が特許請求の範囲に含まれ得るかどうか、請求項に含まれ得るアーキテクチャ特徴(例えば、入力層、隠れ層、出力層、パラメータ、ハイパーパラメータ、接続などのニューラルネットワークの構造)、および/または、問題に対する十分に定義された解決策を提供する合理的に請求されるAIプロセス特徴があるかなど。
解説
AI発明は今後も大きく伸びていくことでしょう。しかし、AI発明の権利化には気をつける点がたくさんあります。
まずこの記事で指摘しているのが、AI発明のタイプの特定。AI発明は広範囲に及ぶため、特許化に適しているものもあれば、企業機密として保持するべきもの、残念ならが現状では特許化できないものもあります。これらを適切に仕分けして、それぞれのタイプに合った適切な知財保護が求められます。
次に、特許適格性の問題です。これはソフトウェア特許とほぼ同じ問題ですので、アメリカのソフトウェア特許に携わっている人なら応用が利きます。AIそのものを権利化する場合は、特許適格性の問題は深刻なので、十分な対策を取る必要があるでしょう。逆に、AIの活用による新薬の開発や新素材の開発などは十分な応用がなされているので、特許適格性が問題になる確率は低くなります。
あと、最近特許適格性に関するウェビナーも開催したので、ぜひ参考にしてください。
次回は、新規性と進歩性の話と開示内容について話します。(ここからはTLC限定コンテンツ。)
TLCにおける議論
この話題は会員制コミュニティのTLCでまず最初に取り上げました。TLC内では現地プロフェッショナルのコメントなども見れてより多面的に内容が理解できます。また、TLCではOLCよりも多くの情報を取り上げています。
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まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Rodney H. Rothwell. Kilpatrick Townsend & Stockton LLP(元記事を見る)