最高裁のSAS判決はIPRに大きな変化をもたらしました。その影響は、今後のIPRだけでなく、SAS判決の前に行われているIPRにも適用されます。今回のBiodelivery Sciences Intl., Inc. v. Aquestive Therapeutics, Inc., Nos. 2017-1265, 2017-1266, and 2017-1268 (Fed. Cir. July 31, 2018)では、SAS判決前のIPRに対してSAS基準で再審議するようCAFCがPTABに命じ、差し戻ししました。
背景
申立人がU.S. Patent No. 8,765,167に対して3つのIPRを申し立てます。1つめの申し立ては、PTABにより受け入れられました(Institute)が、すべてのクレーム、すべての主張に対してはIPRが行われませんでした。2つ目と3つ目の申し立てはすべてのクレームに対してIPRが行われたものの、主張の一部は対象になりませんでした。つまり、3つすべてにおいて、IPRはPartial instituteされていました。SAS判決の前でしたが、申立人はこの3件すべてをCAFCに上訴します。
CAFCの公判は2月に行われ、その後4月にSAS判決が最高裁で下されます。このSAS判決によって、IPRのPartial instituteは禁止されます。この判決後、すぐに申立人はPTABが対象にならなかったクレームと主張に対して審議を行うよう求めます。
特許権者は申立人によるSAS救済(PTABで考慮されなかったクレームと主張の審議)の権利の放棄を主張しましたが、CAFCはその主張を却下。CAFCは、SAS判決は、この案件が上訴されている間に起こった重要な法律の変更のため、申立人は、SAS救済の権利を放棄していないとしました。また、申立人がSAS判決からわずか9日後に最初のSAS救済を求めてきたという点にも注目し、申立人は速やかにSAS救済を申し出たとしました。
すでにSAS判決はSAS判決以前のIPRにも影響するということを書きましたが、この案件はSAS以前のIPRにSAS救済が行われた実例案件になります。
教訓
SAS判決やTC Heartland判決など、裁判所が「重要な法律の変更」と位置づける判例については、既存の案件にも影響を与える可能性があります。そのような判例に関わる案件がある場合、判決の直後にすぐ案件の詳細を確認し、判例が適用されるか検討することが重要です。また、適用される可能性がある場合、速やかに裁判所に申し立てするべきです。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Cara Lawson. Winston & Strawn LLP (元記事を見る)