判例に学ぶ従業員に対するDTSAの適用ポイント

Defend Trade Secrets Act of 2016 (“DTSA“)は連邦レベルの企業機密を守る法律です。成立してからDTSAに関する判例が増えるに連れ、少しづつ気をつけるべきポイントがわかってきました。今回は、(元)従業員に対するDTSA適用を考える際に気をつけたい2つのポイントを判例を通して説明していきます。

1.不当解雇で訴えられた場合の「開示」リスク

Christian v. Lannett Co., Inc., No. CV 16-963, 2018 WL 1532849 (E.D. Pa. Mar. 29, 2018)では、元従業員が不当解雇を理由に製薬会社を訴えていました。訴えられた製薬会社は、反訴(counter claim)として、不当解雇に関連する2万2千ページにも及ぶ社内文書を元従業員が担当弁護士に渡したことがDTSA違反だと主張。製薬会社は、元従業員が雇用が終わってからも会社の機密情報を保持していたと主張。しかし、裁判所はその主張を退けました。元従業員が公開した情報は不当解雇に関わるものであって、情報を受け取った弁護士も訴訟以外の目的でその情報を使用する意図がないという理由から、この開示は適切だとし、DTSA違反には当たらないとしました。

2.DTSAに関する通告を事前におこなっておく

Xoran Holdings LLC v. Luick, No. 16-13703, 2017 WL 4039178 (E.D. Mich. Sept. 13, 2017)で、R&D会社がDTSA違反で元従業員を訴えました。内容は、会社の機密情報を使い不当に競合しているというものでした。裁判所はDTSAクレームを認め訴訟は進みましたが、会社による弁護士費用と懲罰的損害賠償金を認めませんでした。懲罰的損害賠償金は通常、不正利用で生じた損害賠償(loss damages)と不当利益(unjust enrichment)の2倍まで認められます。しかし、その弁護士費用と懲罰的損害賠償金が認められなかった一つの理由として、問題となった元従業員の雇用契約にDTSAで必要とされる告知がなされていなかったことが挙げられました。この告知は、機密情報やその他の内部情報の使用に関する記載で、その中にはいくつかの限られた目的(内部告発などの正当な目的)に限り情報を使用・公開できるということを説明する内容が含まれます。この告知がすべての雇用契約に含まれていることが求められます。ちなみに、この告知条件は、従業員だけでなく、コントラクターやコンサルタントにも適用されます。この判例から、DTSAを最大限に活用し弁護士費用と懲罰的損害賠償金を求めていく場合、事前に雇用契約の内容と会社ポリシーを読み返し、機密情報や社内情報の扱いに対する項目がDTSAの告知基準を満たすものになっているか確認することが重要です。

まとめ

この上記2つの判例はDTSAを活用するにあたって重要な教訓を教えてくれています。まずは、Lannett事件ですが、法律上の問題によっては、訴訟におけるある程度の機密情報の開示は許可される場合があります。このような場合、開示によるDTSAの違反を主張する場合、DTSAによる機密情報の保護が課題となっている法律上の問題(不当解雇など)よりも重要度が高いと判断され、開示を回避できるかを慎重に考慮する必要があります。次に Xoran事件ですが、DTSAを最大限活用するための告知条件などを訴訟が起こる前に満たしておく必要があります。事前の告知を怠ってしまうと弁護士費用と懲罰的損害賠償金が認められないことがあるので、その認められない場合、相手から得られる金額が大きく下がる場合があります。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Luke J. Archer and James P. Miller. Odin Feldman & Pittleman PC (元記事を見る

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