DTSA下の一方的な押収事例(施行から2年)

2016年のDefend Trade Secrets Act (DTSA) 施行から2年が経ちました。DTSA により、いままで州法で州ごとに守られていた企業機密を連邦法でも取り締まるようになりました。また、DTSA は、州法では認められていなかった一方的な押収(ex parte seizure)も認めています。今回はこの一方的な押収の事例を紹介しながら実際に適用できる条件を見ていきましょう。

まず、一方的な押収(ex parte seizure)ですが、認められれば、U.S. marshals が派遣され、被告人への通知なしに、一方的に証拠を押収することができます。このような証拠保全の救済手段は18 U.S.C. § 1836(b)(2)に明記されていますが、裁判所は特別な事情(“extraordinary circumstances”)がない限り認めないことになっています。

施行から2年、この DTSA に明記された一方的な押収(ex parte seizure)をどう裁判所が適用しているかが徐々に見えてきました。まず、DTSA に関わる案件で一方的な押収が認められるのはまれなことです。一方的な押収を求めても、通常の被告人に通知が事前にある押収(seizure order under Rule 65)で十分だと裁判所が判断することがほとんどです。

しかし、一方的な押収が認められたケースもいくつかあります。1つ目は、被告人の証拠隠滅が懸念される場合です。そのような場合は、通常の被告人に通知が事前にある押収(seizure order under Rule 65)では十分でないと判断される場合があります。しかし、懸念というのは、単なる疑惑(bare allegations)では不十分で、被告が過去に証拠隠滅をした事実など一定の証拠が必要になります。
Axis Steel Detailing, Inc. v. Prilex Detailing LLC, No. 2:17-CV-00428-JNP, 2017 WL 8947964, at *1 (D. Utah June 29, 2017) (defendants “had a high level of computer technical proficiency, and there had been attempts by the defendants in the past to delete information from computers, including emails and other data.”).

また、被告人に誠意がない場合や詐欺まがいのことをした過去がある場合、裁判所が押収を許可する傾向にあります。Solar Connect, LLC v. Endicott, No. 2:17-CV-1235, 2018 WL 2386066, at *2 (D. Utah Apr. 6, 2018) (in addition to computer and technical proficiency and attempts to delete information in the past “Defendants have also shown a willingness to provide false and misleading information, including false information to conceal their identity [and] a willingness to hide information and move computer files rather than comply with requests to cease use of Plaintiff’s proprietary materials.”); Mission Capital Advisors LLC v. Romaka, Civ. Action No. 16-cv-5878 (S.D.N.Y. July 29, 2016) (defendant claimed he deleted files but forensics later discovered a “trove” of misappropriated files); Blue Star Land Servs., LLC v. Coleman, Civil Action No. 17-cv-931 (W.D. Okla. Dec. 8, 2017) (defendants misappropriated 20,000 documents while employed after learning of a large new project and threatened to usurp opportunity if not given 66% of company among other misconduct).

このように何らかの証拠が必要になりますが、被告人の過去の行動に証拠保全に対する懸念材料がある場合、一方的な押収(ex parte seizure)が認められる場合があります。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Kevin J. Burns. Fisher Phillips  (元記事を見る

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