COVID-19と商標を悪用した詐欺

新型コロナウイルス(COVID-19)の惨事の時に特定のブランドは、消費者に対する信頼性や評判から、商標を悪用した詐欺のターゲットになりやすいです。特に、医療関連の製品を販売している会社は特に気をつけるべきでしょう。

詐欺師はよく知られている商標を悪用してそのブランドになりすましたり、スポンサーや提携などを装って信用があるように見せたりすることで、商売をしたり情報を入手することがあります。

詐欺行為を知る

なりすましには様々な形が考えられます。例えば、存在しない割引を提供したり、カスタマーサービスを装ったり、フィッシング詐欺を行ったりして、個人情報を入手したり、お金をだまし取ったりする方法があります。詐欺師は、FacebookやTwitter、LinkedInなどのSNSの偽アカウントを使って、ログイン情報を提供させたり、偽物のサポートサービスに加入するよう進めたりしてきます。

他には、cybersquatting で商標関連のドメインを買い占められたり認められていない共同ブランドなどで、売り上げを失ったり、ブランドの信頼性に著しい被害をもたらすことがあります。特に、cybersquatting は一般的な方法で、商標名とあまり使われていないトップレベルドメイン(.net)などを掛け合わせたり、よくあるタイプミスや言葉を追加することで、簡単に商標に関連したドメインを取得できます。ドメインがあれば、詐欺師はそのドメイン上に作ったサイトで広告を出したり、模倣品を販売するかもしれません。特に模倣品は危険で、正規品に劣るものだったり、中には危険なものだったりする場合があります。

詐欺師を特定する

このような商標を悪用して詐欺行為をしている人物を特定する一番のリソースは従業員です。ブランドの従業員はブランドの使用基準や正規の使用か否かについて一番知識があります。従業員に積極的に詐欺師を特定してもらおうと思うのであれば、賞金制度を導入して、商標侵害が疑われる案件の特定と報告を奨励することもいい方法だと思います。

また、商標のwatch serviceもさまざまなところから提供されているので、そのようなサービスを活用するのもいいでしょう。詐欺師は行動が早いので従業員だけに頼っていたらリソースが滞ることが心配されます。また、オペレーションがあまりない海外でもそのような商標を悪用する行為があるかもしれません。また、Watch serviceを使う場合、弁護士事務所を経由した方が運用面でも導入コスト面でもいい場合があります。

対処方法

どのような侵害行為が法的な手続きを必要とするかは明確ではありませんが、一般に対する危害やビジネスに対する悪影響は対処方法を考える上で重要な要素になってきます。

まず、何らかの対処が求められる場合、弁護士の監修の元、ビジネスパーソンが侵害している相手に何らかのコミュニケーションを取るのがいいでしょう。コスト面でも弁護士が直接介入しないので安価でできるし、また、正式に法的な手続きを取るというカードを持つことができます。

もし最初の停止警告が受けいられない場合、様々なツールがあります。例えば、domain name arbitration、 ecommerce and social media take down processes、また、民事訴訟などがあります。また、the International Anti-Counterfeiting Coalition (IACC)などの特定の業界団体は会員に対して特別なプログラムを提供しているところもあります。また、刑事事件の可能性があるならば、the National Intellectual Property Rights Coordination Centerに問い合わせるのもいい方法です。

また、ドメイン名の問題の場合、ブランド所有者は、ホストのサービス規約上のリクエストをしたり、Uniform Domain-Name Dispute Resolution Proceedings (UDRP), Uniform Rapid Suspension (URS) for new gTLDs, Public Interest Commitment Dispute Resolution Procedure (PICDRP), Trademark Post-Delegation Dispute Resolution Procedure (PDDRP), Sunrise Dispute Resolution Procedure (SDRP), また、 the United States Anti-cybersquatting Consumer Protection Act (ACPA)など様々な形で対策案を練ることができます。

まずはブランド登録から

様々な方法で商標を悪用した詐欺の対策はできますが、実際に重要な市場となる国で商標登録をしておくことが大前提になります。例えば、Aazon.comで取締をリクエストする場合、自分の権利を証明する必要があります。そのときに、商標が登録されていないと、権利を証明するのが難しくなるので、侵害を止めることができません。

解説

普段の暮らしの中でも商標を悪用する活動はありますが、災害や大きな事件が起きた際にその活動が活発になるのは悲しい現実です。今回の新型コロナウイルス(COVID-19)の惨事でも様々な人災がありましたね。今後もさまざまな企業や商品のブランド力を悪用した行為が出てくると思われるので、対策が必要だと思われます。特に、cybersquatting を含めたオンライン上での商標の不正利用はより一般的になってくると思います。今後のためにも重要なマークから対策に乗り出すことをおすすめします。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Kara D. Ford and Cameron Murphy. Eversheds Sutherland (US) LLP  (元記事を見る

ニュースレター、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

企業機密
野口 剛史

公開データのスクレイピングが営業秘密の横領に?

公開情報であっても機械的に情報を集めた場合、その集合体が企業機密に値するかもしれないという見解を示した面白い判決です。今後データはより重要になってきますが、取得する情報自体の機密性に限らず、データ群を集める収集方法にも気をつけないといけなくなるかもしれません。

Read More »
man-typing-laptop
ビジネスアイデア
野口 剛史

リモートワーク応援サイト

今回の新型コロナウイルスの影響で会社や事務所に行けず、自宅で作業をしなければいけないという人も少なくないと思います。そこでクラウドベースのリモートワークに関する知恵やテクニックをみんなが紹介できるサイトやクループを作ってみたらどうでしょう?

Read More »
statistics-stack-of-documents
訴訟
野口 剛史

Negative claim limitationをどう先行例文献で示すのか?

アメリカの特許のクレームを読んでいるとたまに「~を含まない」などのクレーム制限を見ることがあると思います。そのような制限はNegative claim limitationとよばれますが、特許を無効にしたい場合、どのような先行例文献を提示すればよいのでしょうか?

Read More »