COVID-19への対応: PREP法から見た特許侵害免責の可能性

多くの企業は、医療従事者向けに個人用保護具(Personal Protective Equipment: PPE)を製造・販売することで、COVID-19との闘いに貢献したいと考えています。しかし、特許侵害訴訟の脅威にさらされる可能性があることから、企業は躊躇してしまうかもしれません。しかし、PREP法の解釈によっては、この脅威を軽減できるかもしれません。

PREP法とは?

PREP法とは、2005年に制定されたPREP(Public Readiness and Emergency Preparedness)法のことです。PREP法では、特定の訴訟原因からの免責については特に言及していませんが、PREP法の範囲の広さから、特許侵害の請求にも適用される可能性があることが示唆されています。

このように、PREP法は、(a)特定の「対象となる対策」の製造、開発、販売を推奨し、(b)PREP法が提供する責任保護を発動する「宣言」を発行する権限を保健福祉省長官(HHS)に与えています。

COVID-19に関する宣言

COVID-19に対応して、アレックス・アザール長官は2020年3月10日に、2020年2月4日に遡及するPREP法宣言を宣言しました。この宣言では、「対象となる人」は、「対象となる対策」の製造、試験、開発、配布、管理、使用を行う「対象となる人」であっても、これらの活動によって生じた、それに起因して生じた、それに関連して生じた、またはそれに起因して生じた損失のいかなる請求も訴えられないと一般的に規定されています。

宣言では、「対象となる者」には製造業者や販売業者などが含まれ、「対象となる対策」には、例えば、COVID-19の治療、予防、緩和に使用される薬剤や装置などが含まれると定義されています。

宣言とPREP法の解釈

PREP法も今回の宣言も、特許侵害については特に言及してはいません。しかし、特許権侵害の主張は連邦法の下で一般的に不法行為と考えられています。したがって、まだ法律に不明瞭な点もあり、憲法上の課題もあるかもしれませんが、特許権侵害は、PREP法の対象となる対策品の設計、開発、製造、流通との「因果関係」を有する「[知的]財産の損失または損害」とみなされる可能性があります

制限

PREP法と今回の宣言は、特許侵害の主張を潜在的に包含する広範な保護を提供している反面、制限があるので注意が必要宇です。例えば、以下のような制限があります。

  • 対象となる対策は、PREP法、連邦食品医薬品化粧品法、公衆衛生法で定義されているように、「適格なパンデミックまたは流行性製品」、「セキュリティ対策」、または調査または緊急時の使用を許可された医薬品、生物学的製品、または装置でなければならない。
  • 責任免除は、「故意の不正行為」によって引き起こされた死亡または重篤な身体的傷害には適用されない。
  • 責任免除は、以下に関連する対象となる対策を含む特定の活動に限定されます。(1) 現在または将来の連邦契約またはその他の連邦協定、または (2) 緊急事態宣言の後、連邦、州、および地方自治体の公衆衛生および医療対応に基づいて、対象となる対策を処方、管理、交付、配布、または 投与する権限を当局に与えられた活動。

企業がPPEの製造・販売を希望しているが特許侵害を懸念している場合には、法的助言を求めて、これらの懸念を軽減するための選択肢を検討する必要があります。

解説

今週投稿した別記事では、Open COVID Coalitionという形で特許などの知財権利者が誓約をし、「無料」でライセンスを提供するという形でCOVID-19との闘いに貢献していましたが、今回の話は、製造・販売した後の特許侵害免責の可能性を考えたものです。簡単に言うと、前者が「事前対策」で、後者が「事後対策」といったところでしょうか。

COVID-19と知財の考察は、別記事に書いたのでそれを見てもらえると助かります。

今回のPREP法に関して言うと、実際にPREP法が知財侵害にも適用されるかというのは、まだはっきりしていません。現状では、特許侵害免責の可能性という段階なので、実際に訴訟が起きた場合、どう裁判所が判断するかはわかりません。

しかし、ただでさえ供給が不足している個人用保護具(Personal Protective Equipment: PPE)を製造・販売するのであれば、たとえ、製品の一部に他社の特許で保護されている部分があったとしても 、その権利者である企業が権利行使を行ってくるとはあまり考えられません。権利者として訴えることが可能であったとしても、世論が反発して、ブランドイメージが大きく悪化する可能性があるからです。

個人的には、COVID-19との闘いに貢献したいという思いで、自社のリソースを使い、すでに異業種の企業も行っている医療従事者向けに個人用保護具の製造や販売をする範囲だったら、特許侵害を心配する必要はないと思っています。しかし、製造や販売を計画しているものによっては、より慎重な判断が求められるかもしれません。

日本でもアメリカのPREP法に代わるような法律があるのかはわかりませんが、知財侵害リスクを懸念して、COVID-19との闘いに貢献したいが躊躇している企業や組織があるかもしれません。個人的な考えですが、知財の観点からも環境整備をして、今あるリソースを最大限につかって一刻も早くCOVID-19が終息できるよう願っています。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Banner Witcoff  (元記事を見る

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