知財のコスト削減をする上での注意点

COVID-19パンデミックの経済的影響は大きく、多くの企業が支出の引き締めにかかっていると思います。その中で、コスト削減のために知的財産ポートフォリオに注目する企業もあるかもしれません。しかし、注意してほしいのは、特許への投資を縮小するという決定は、パニックの中感情的に行われるべきではなく、ビジネス上の考慮事項に基づいて行われるべきです。

出願前の明細書

まだ出願していない、あるいは明細書を書き始めていない特許出願については、特許出願の準備、出願、そして最終的には出願審査にかかるコストに見合うだけの価値があるかどうかが問題になるかもしれません。しかし、ある程度の発明の内容が書かれている書類があるならば、その価値の査定をしている間に、仮出願をするのもいい方法です。

今回のようなパンデミックが発生している状況でも、発明は起こり、イノベーションは進んでいきます。特に、クラウドコンピューティング、電子商取引、ストリーミング、医療技術などの特定の分野では、これまで以上に活発な研究・開発が行われることでしょう。その中で研究開発の成果を守るための最も効果的な方法の1つが特許です。

出願したが許可されなかった特許出願について、出願人は、特許出願の審査(すなわち、許可されるように努力すること)にさらにお金をかけ続ける価値があるかどうかを考えるかもしれません。特に、特許が認められるまでに何回拒絶査定を受ければよいのかが不明確な場合には、この判断は難しいものとなります。ここでは、問題を扱う弁護士とコミュニケーションをとり、出願が許可される見通しを話し合うことが賢明かもしれません。弁護士は、出願が直面している拒絶の種類、先行技術、及び/又は審査官との話し合いに基づいて、審査の段階をよりよく理解しているかもしれません。出願が許容範囲に近い場合には、最後のいくつかのステップに資金を提供する価値があるかもしれません。出願が許可から遠ざかっている場合には、継続的な審査費用は、出願を進める意欲を上回る可能性があります。

出願中の案件

出願中の案件についての決定を下す際には、出願人は、そもそも出願をした動機を再検討する必要があります。特許出願には様々な戦略的な目的があり、それらの目的は、出願を維持するか、中止するかの決定に大きな影響を与えます。例えば、出願の目的が単に出願人が将来的に技術革新を計画している技術領域をクリアしようとしているだけであったり、出願人が単にポートフォリオの数を増やしたいと考えているだけであったりすると、その目的が継続的なコストに比べて見合わない可能性があります。しかし、出願人が潜在的な侵害者からの保護など、出願人が製造または実施する予定の製品またはプロセスを保護しようとしている場合には、特許を取得する価値があるかもしれません。同様に、発明の権利を他の当事者にライセンスすることを目的としている場合、出願人はそのために特許を必要とする可能性が高いです。

現在のCOVID-19のパンデミックに関連した職場や経済的な苦境を考えると、企業によっては、すでに出願した案件に対して審査を継続させるべきか、取り下げるべきかの決定を下すことや、USPTOから受けたOA対応の期限を守ることは難しいかもしれません。場合によっては、期限の延長を申請しなければならないかもしれません。欧州特許庁を含む他国のいくつかの特許庁は、すでに特定の期限を延長しています。現在までのところ、USPTOはそのような動きをしていません。しかし、コロナウイルス救済・救済・経済安全保障(CARES)法の最終文書では、USPTO長官に法定期限の短縮、免除、調整、修正を決定する権限を付与したため、USPTOでも何らかの処置が行われる可能性があります。そのような決定がなされた場合、長官は公告を公表します。

許可されたがまだ発行されていない特許

許可されたがまだ発行されていない特許については、許可通知を受けてから発行手数料の支払期限までの間に、発行された特許を有効に維持するために発行手数料およびその後の維持手数料を支払うかを、出願人が判断できる期間があります。また、この期間の間に、許可された出願に関連して、継続出願、部分継続出願、分割出願などの関連出願をするかを考えるのも重要です。 しかし、このような関連出願にはさらに費用がかかります。 このような関連出願の手数料の支払いを数ヶ月延期することができますが、不確実な経済状況下では、これらの費用は法外なものになることがあります。

すでに権利化されている特許

発行された特許については、維持費が問題になります。米国では、特許の有効性を維持するために、特許発行後3年、7年、11年の3回、維持費を支払うことになっています。維持費が近い特許がある場合、維持費を払う価値があるのかを事前に社内で評価するべきでしょう。また、現在のところ維持費の支払期限の延長は発表されていませんが、USPTO長官はCARES法に基づいて付与された権限を行使することで、維持費を変更することができます。

維持をしないと判断した場合、そのまま失効させるのもいいですが、場合によっては売却することもできるかもしれないので、そのような場合は売却も検討することをおすすめします。

解説

現実、知財に関連するコストは簡単にカットできます。しかし、R&Dに投資していない会社がビジネスで勝てないように、知財に投資していない会社は後で大きなペナルティーを支払うことがよくあります。

知財もR&Dと同様、長期的な視野をもって、戦略的に判断し、投資していかなければいけない分野です。これを言うのは簡単ですが、実際にちゃんと知財を理解している経営者は少ないのが現実です。

今回のようなパンデミックになってしまうと、今後の事業の予測が立てられないので、パニックになってしまい、正しい経営判断ができなくなってしまう傾向にあります。そのときに、知財がコストカットの対象になってしまった場合、知財部長などが中心になって、知財の大切さを経営者にアピールして、説得することが大切だと思います。

そのためにも、社内でコストカットなどの動きがあるようでしたら、自発的に現在の知財のポートフォリオを確認し、会社の戦略に基づき再評価をし、コストカットできるところと、どうしても維持しないといけないところを明確にして、上層部に説明できるように準備しておくことが大切だと思います。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Erin C. Caldwell. Baker & Hostetler LLP  (元記事を見る

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