会社の取締役として、知的財産の扱いを取締役会のアジェンダに加え議論していくことはとても大切です。適切なIPガバナンスをすることによって、自社の知的財産の価値を最大圏に活用することができ、その結果、会社の価値をあげることができます。
知的財産が競争力の源になっていることが多い
多くのビジネスでは、ブランド、のれん、トレードシークレット、特許、ソフトウェア、著作権、製品の特徴的なデザインなど様々な知的財産が競争力の源になっています。このようにビジネスに直接影響を与える知的財産は会社にとって特に重要で、取締役としての役割を果たすためにも、取締役会などでしっかり議論し、適切な運用をおこなうことが求められています。
実際の例
では、実際にIPガバナンスがしっかりできている場合、どのようなことができるのか、いくつかの例を挙げていきます。
IP Due Diligence とM&A 活動
- 取締役がIPリスクと機会を適切に理解することで、より効果的な合併、買収、売却が行える。
- IPに通じた取締役がいることで、買収を検討している会社に対して高度なレベルの知財に対する質問ができ、より深い調査と査定が行える。
- ターゲット候補の知財の強みと弱みを知ることで、適切な価値を査定でき、補償などの交渉もしやすくなる。
- 適切に運用されている知財をもっていることで、会社の価値を上げられる
- 取締役が自社の知財の強みと弱みを理解することで、他社が自社の買収を検討するさいに的確な情報を提供できる。
投資家、市場への公開情報
- 投資家や市場から知的財産の開示義務が求められる場合があるので、その対応をする必要がある。.
- 自社知財の価値を誇張しすぎると、市場で悪影響をおよぼす可能性がある。知財は適切に価値を見極めることが必要。
企業戦略にあった知財
- ビジネスの戦略をサポートする知財があることで、会社の業績に貢献できる。
- 市場で求められている技術を特許化することで、他社による特許訴訟を未然に防ぐことができる。
効果的な知財運用の方法
IP Audit
まず最初にどのような知財がすでに自社にあるのかをチェックしカタログ化していく。専門の担当IP auditを行うことで重要な知財を見える化することが大切。このステップでは知財の特定だけでなく、所有者やライセンス権利なども把握しておくと更にいい。
IP Asset Register
IP auditで特定した知財を社内でレコードする。一覧になった表ができれば、役員が知財運用を取り扱う時にとても便利。
Board Agenda
知財運用の善し悪しによって、ビジネス戦略、市場価値、オペレーションリスクに大きな影響をおよぼしかねないので、取締役会で十分議論することが大切。
IP Policy
知財が取締役会で話されるようになり、役員の知財の理解が深まったところで、会社全体の知財ポリシーを作ることが大切。ポリシーを作ることにより、マネージャーや従業員に求められている知的財産の扱い方を示すことができる。
IP Strategy
ポリシーが完成し、自社の知財の強みと弱みがわかったら、次は知財戦略を考えることができる。戦略は会社のビジネス戦略をサポートするものであることが理想。
IP Expertise
取締役を選ぶ際、知財の知識が豊富な人材を確保しておくことが重要。その人だけに知財を任すことはできないが、そのような人材が取締役にいることで、知財の重要性を他の役員にも認識してもらうことができる。
Risk Committee
もし会社が知財に関する大きなリスクを背負っているということがわかったら、役員はrisk committee を作り、より詳しくそのリスクについて対応していくべき。
まとめ
役員が率先的に知財ガバナンスをすることで、会社に大きく貢献することができます。IP auditに始まる効果的な知財運用方法も紹介したので、これをテンプレートに効果的な知財運用を行っていくことをおすすめします。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Buchanan (元記事を見る)