AIコンテンツに関する著作権問題は数多くあり、そのほとんどが未だに未解決のままです。しかし、アメリカの著作権局は積極的にAIの問題に取り組んでおり、先月、幅広い未解決問題を含む調査を発表しました。この調査では、AIと著作権に関わる多くの質問がリストされていて、著作権局は一般から意見を求めています。
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8月30日、米国著作権局は「著作権と人工知能に関する調査通知」を発表しました。この調査の目的は、同局のAIに関する調査に情報を提供し、立法措置または規制措置が必要かどうかを評価することです。
徐々に枠組みができつつあるも未解決問題の方が圧倒的に多い
今年の3月、著作権局は方針声明を発表し、AIが生成したコンテンツを含む作品が著作権保護の対象となるためには、人間の著作者であることが必要であることを明らかにしました。また、最近、ワシントンD.C.地方裁判所は、AIアルゴリズムであるDABUSによって作成された画像は著作権で保護されないという判決を下し、著作権局はこの裁判所の判断を支持していました。今回の訴訟における問題には決着がつきましたが、著作権とAIに関連する多くの問題がまだ宙に浮いており、簡単には答えが出ない状態です。
調査の鍵となる4つのポイントと幅広い質問リスト
今回の調査通知は、AIに関連する著作権に関する長い質問のリストを提示しています。これらの質問は主に以下の4つの分野に焦点を当てています:
- AIモデルを訓練するための著作物の使用
- AIシステムによって生成された出力の著作物性
- AIシステムを用いて生成された作品による著作権侵害の可能性
- 人間のアーティストのアイデンティティやスタイルを模倣した生成的なAIのアウトプット
質問の中には、「AIモデルの開発者は、どのようにして、あるいはどこで、モデルが学習する素材やデータセットを入手しているのか?」といった現在のAI開発におけるリソースの出処に関するものもあります。
その他の質問では、AIモデルを学習させるための著作物の無許可使用はフェアユースなのか、AIモデルの学習に著作物を使用する際に著作権者の同意が必要なのか、AIが生成した出力は既存の著作物の排他的権利を侵害するのか、など、最近盛んに議論されていたり、AI企業に対する訴訟の焦点となっているトピックに関するものもあり、そのような問題に対して、一般からの意見を求めています。
また、デジタルミレニアム著作権法(DMCA)に基づく著作権管理情報の削除や改変の禁止が、著作権管理情報を含む著作物をトレーニングしたAI生成システムの出力にどのように適用されるのか、AI生成物に適用される新たな連邦パブリシティ権を議会が創設すべきかどうか、など、プログラミングやAI音楽等の幅広いコンテンツに関わる質問も行っています。
政府機関の注目を集めているAI
著作権局は今年初めにAIイニシアチブを開始しました。
今回の調査通知は、著作権法とAIの交差点について、著作権局が包括的な検討を進めることを示唆するものです。この通知は、同じトピックのいくつかに焦点を当てた議会公聴会の後に出されました。連邦取引委員会(FTC)は最近のブログで、ジェネレーティブAIと著作物について触れています。
このような動きからジェネレーティブAIの急速な普及に、議員や規制当局の注目が集まっていることがわかります。このことから、今後新たに作られるであろう「AI法」はとても重要なものになり、今後のビジネスや社会へ大きな影響を及ぼすことでしょう。
参考記事:Copyright Office Seeking Comments on AI-related Copyright Issues