Western Digital Corp v. SPEX Techにおいて、 PTAB は IPR 手続きにおけるクレーム補正のガイドラインを示しました。IPR2018-00082, Paper 13 (PTAB Apr. 25, 2018). このWestern Digital事件は、CAFC en banc による判例Aqua Products, Inc. v. Matal, 872 F.3d 1290 (Fed. Cir. 2017)に関連していて、 IPR 手続きにおけるクレーム補正に関して重要なケースになります。ちなみにAqua Products事件では、IPR 申請人が補正クレームの非特許性を示さなければならないということが言い渡されました。
PTAB がWestern Digitalで提示したクレーム補正のガイドラインは以下の8つの点を含みます。 1) contingent motions to amend, 2) the burden of persuasion, 3) the reasonable number of substitute claims, 4) responding to a ground of unpatentability involved in the trial, 5) scope of the claims, 6) claim listing, 7) default page limits, and 8) duty of candor. These issues are discussed below.
1. Contingent Motions to Amend
ある主張が受け入れられなかった場合のリクエスト(Contingent Motions)として、クレームをキャンセルする(cancel claims)ということは認められませんが、クレームの代替(substitute claims)は認められます。このようなクレーム代替を行う場合、クレームごとにどのような代替がどのような条件で行われるのかを具体的に詳しく明記することが求められます。
2. Burden of Persuasion
Aqua Productの判例と同様、 IPR 申請人が補正クレームの非特許性を示さなければならないといけません。何らかの形で申請人が参加しない場合、 PTAB がすでに提出されている証拠から非特許性を判断する可能性もあるとのことです。
以下の 3) から 8) は35 U.S.C. 316(d) と § 37 C.F.R. § 42.121に関わるものです。
3. Reasonable Number of Substitute Claims
特許権者は IPR で対象になったクレームをキャンセルまたは、そのクレームの代替クレームを提示できるとしています。35 U.S.C. § 316(d)(1)(B). また、代替クレームの数は各クレームごとに1つと仮定されています。 37 C.F.R. § 42.121(a)(3). しかし、その仮定は覆すことができ、1つのクレームに対して複数の代替クレームを提案する場合、代替クレームとその理由が問われます。最終的には、 PTAB がそのような複数の代替クレームが理に適っているかを決めます。
4. Respond to a Ground of Unpatentability Involved in the Trial
クレームの補正は非特許性が主張されていることがらについての補正でなければいけません。補正が非特許性が主張されていることがらについての補正か否かは PTAB が証拠を考慮しつつ行います。
ここで興味深いのは、クレームに対する補正のすべてが非特許性が主張されていることがらについての補正である必要はなく、そのような補正があれば、 IPR では主張できない無効理由(例えば101条や112条)に関する補正も可能という点です。( “[O]nce a proposed claim includes amendments to address a prior art ground in the trial, a patent owner also may include additional limitations to address potential § 101 or § 112 issues, if necessary.”)
また、補正によってクレームの範囲が拡大するような補正はできません。
5. Scope of the Claims
クレーム補正は明細書でサポートされていなくてはならず、もし優先権を主張している場合、クレーム別に優先権を主張している明細書の内容からクレーム補正のサポートを示さなければなりません。
6. Claim Listing
クレーム補正をリクエストする場合、クレームリストを作成する必要があります。37 C.F.R. § 42.121(b). また、クレーム補正はAppendixに入れれば、ページ制限にカウントされません。
7. Default Page Limits
37 C.F.R. § 42.24において、クレーム補正リクエストのページ制限は25ページとなっています。
8. Duty of Candor
37 C.F.R. § 42.11において、特許権者が知っている対象特許に対して重要な文献であって、その文献がすでに提出されていなかったら、特許権者は PTAB にその文献を提出する義務があります。
これには、補正クレームにも当てはまり、クレーム補正にあたり特許権者の主張と食い違う文献も、特許権者が知っていれば、その文献を提出する必要があります。
まとめ:
このようなPTABによるクレーム補正リクエストに関するガイドラインは、今後のIPRの手続きをスムーズにさせるものになるでしょう。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Shawn B. Cage. Buchanan Ingersoll & Rooney PC (元記事を見る)