カリフォルニア州の地裁が企業機密訴訟をリード

知財訴訟調査会社であるLex Machina社の調査によると、アメリカ国内で企業機密に関わる訴訟が一番多いのはthe United States District Court for the Central District of Californiaとのことです。Trade Secret Litigation Report 2018, Lex Machina (July, 2018); World Intellectual Property Review, California Court Most Popular Destination For Trade Secret Cases: Lex Machina (July 19, 2018). 2016年にDTSAが施行されてから、企業機密訴訟はより数が増え、連邦裁判所における案件も全体で30%増えました。連邦裁判所で行われる企業機密訴訟の6%がCalifornia’s Central Districtで起こっているという事実から、今後DTSAの法解釈なのでCalifornia’s Central Districtが重要な裁判所になってくることが予想されます。

California’s Central Districtに企業機密訴訟が集中するのか?

California’s Central Districtは、人口も多く、管轄には多くの企業の本社も含まれます。また、カリフォルニア州は、雇用におけるnoncompete agreementを認めないので、従業員が競合他社へ転職することも自由にできます。

このように、元従業員が競合他社に転職することを雇用契約では防げないので、雇用主はその代替手段として、自社の企業機密や重要な非公開情報が競合他社に渡らないようにするため、企業機密訴訟を起こすということになっているのかもしれません。DTSAにおいて、元従業員が企業機密を不正利用したり、不正利用を脅かしたと雇用主が証明した場合、差し止めが可能です。

カリフォルニア州での転職は訴訟問題に発展?

企業機密訴訟がnoncompete agreementの代わりに使われるようなことがある場合、ターゲットになった元従業員には大きな負担になってしまいます。そのような事態を回避するためにも、事前に雇用契約の際に、カリフォルニア州でも認められるよ可能性のある限定的なnoncompete agreementを事前に雇用主と交渉し、雇用契約を結ぶということも考慮するべきかもしれません。

雇用主に面からも、企業機密訴訟は大がかりで、訴訟がどう進むか不透明な部分が多いので、そのような訴訟のリスクを抱えて転職を阻止するよりも、限定的なnoncompete agreementを結んでおけば、その契約からある程度の見通しと保護が得られる可能性があります。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Holland & Knight LLP – Matthew Zimmerman and Seth J Welner(元記事を見る

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