CAFCがArthrex判決の再審と再審en bancを否定

2020年3月23日、CAFCは、PTAB ALJの任命が違憲であると判断したArthrexの上訴において、再審と再審en bancを否定しました。Arthrexは憲法の問題ということもあり、当事者だけでなく様々な団体からAmicus briefが提出されるほど注目されていました。しかし今回の判決で、最高裁で審議されない限りこの案件はこのまま終わりそうです。

Arthrex, Inc. v. Smith & Nephew, Inc. No. 18-2140, Order Denying Rehearing and Rehearing En Banc, Dkt. 115.

今回、CAFCは再審と再審en bancを否定したものの、CAFC判事の間でも意見が分かれている状態です。そのため、もしかしたら最高裁で審議されるかもしれませんが、とりあえず現状の実務レベルでの影響を見ていきましょう。

実務上の影響

この再審拒否により、Arthrex判決はそのまま残されることになります。Arthrex判決に関しては、以前OLCの記事でも取り上げたので、その記事を参考にしてください。

Arthrexを執筆したMoore判事の同意書において、Arthrexの実際的な影響を次のように述べています「Arthrex自体を含む最大81件しか判決が取り消され、PTABに差し戻しされない」。Arthrex判決はPTAB ALJの任命が違憲であると判断したため、PTABにおけるALJの判決が無効になってしまうという結果をもたらしました。これ自体は大変な問題ですが、CAFCは、Arthrexに関するPTABへの差し戻しができる期間を2つの方法で制限しました。

第一に2019年10月31日のArthrexの後、救済措置を取ったため、「今後のinter partes reviewの決定は、違憲パネルによって下されることはなかった 」ということになりました。

第二に、判決の無効化と差し戻しは、Arthrex以前に発行された判決で、特許権者が開始準備書面の中で、または開始準備書面の前に、任命権条項への挑戦が「適切に保存された」場合にのみ可能であると解釈されています。つまり、Arthrex判決以前の案件であっても、このような条件が満たされていないとPTABの判決は無効にならないという訳です。

このようにArthrex判決が適用される案件はかなり限定されるため、81件のケースにのみ適用されるとしています。

最高裁がArthrexを取り上げない限り、APJの終了規定はArthrexパネルが残したままであり、少なくとも81件の控訴が差し戻しの対象となる可能性がある。

解説

このArthrex判決が注目されている理由は、そもそもPTABでの最終判決が出ていて、CAFCに控訴中の案件に関して、PTABにおける最終判決が破棄される可能性があったからです。Arthrex判決が適用される案件は、ほぼ自動的にCAFCがPTABに案件を差し戻し、新しいAPJのパネルで再審議がおこなわれるでしょう。

このような問題からCAFCによる再審と再審en bancが求められていましたが、今回それが否決されました。一番懸念されていたArthrex判決により「PTABにおける最終判決が破棄される可能性」がある案件は最大81件で、それ以外の案件は対象にならないから審議の必要はないというのが今回の否決に含まれたCAFCのメッセージです。

この81件というのが多いのか少ないのかはさておき、今後の案件への影響がないということと、事実差し戻される最大で81件の案件は今後2年ほどで新しい最終判断がPTABで出るので、CAFCによる再審と再審en bancは必要ないと判断したのだと思います。

とりあえず、最高裁での審議のチャンスもありますが、今後のIPRなどのPTABにおける手続きに関して影響がない場合、個人的には最高裁で取り上げられる可能性は低いと見ています。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: John A. Marlott,  Nate Andrews and David M. Maiorana. Jones Day  (元記事を見る

OLCの米国知財ニュースレター

最新まとめ記事を
毎週メールボックスにお届け

登録すると、週1回、最新まとめ記事の概要とお知らせを受け取ることができます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

man-typing-laptop
訴訟
野口 剛史

バーチャル特許表示を忘れない

CAFCは、2017年、 Arctic Cat Inc. v. Bombardier Recreational Products Inc. において、特許表示(Patent Marking)の重要性を再提示した。今回問題になったArctic Catの特許は、AIA以前のものなので、このバーチャル特許表示は適用されないが、今日のAIA後の世界ではバーチャル特許表示は重要になってくる。

Read More »