日本でニセサイトによる詐欺被害がニュースになりましたが、アメリカではスタートアップでもサイバースクワッティングの被害にあってるところもあり、スタートアップでさえもインターネット上でのブランドの利用状況を監視しないと、後で大変なことになる例も出てきています。
サイバースクワッティング(Cybersquatting)は特定のブランドをターゲットにする迷惑行為を示すことが多いです。今までは、昔からあるブランドがターゲットにされていましたが、このような考え方はもう古いです。現在は、スタートアップでさえサイバースクワッティングの被害を受けることもあります。
例えば、IT分野では、商標を複製または模倣したドメイン名の不正登録が日常的に発生しています。IT分野以外では、ブランドがすぐに世界的に認知されるようになることはめったにありませんが、それにもかかわらず、ソーシャルメディアの活動、革新的な製品、優秀な賞、インキュベーターの枠内での資金調達、クラウドファンディングの成功、創造的なリーダーやカリスマ的なリーダーなどは、ブランドの知名度を高めるのに有効です。しかし、そのような成功は害虫も引き寄せます。
その典型的な例が、Juulブランドの歴史でしょう。2015年に設立された電子タバコのこのメーカーは、多くの場合、正当性がなく、時には不正使用され、有害であったドメイン名の使用を終了させることを目的とした100以上の手続きを、わずか数年の間に開始することを余儀なくされてきました。
ファッション業界では、Jacquemus(2014年設立)は、全盛期にもかかわらず、早くからUDRP訴訟で評判と誠実さを守ってきたブランドのもう一つの例です。争点となっているドメイン名の使用は、会社にとっても詐欺サイトへの訪問者にとっても有害であることが証明されています。コンピュータウイルスによる汚染(D2020-2073, Jacquemus SAS v. Wenben zhou, September 28, 2020)、ドメイン名の受動的所有(D2020-2076, Jacquemus SAS v. Michael Pe, September 24, 2020; D2020-2063, Jacquemus SAS v. Privacy Administrator, Anonymize, Inc. September 28, 2020)
いずれにしても、有名ブランドだけがサイバースクワッティングの標的になっているわけではないことを念頭に置いておく必要があります。スタートアップ企業は、サイバースクワッティングや偽造など、知的財産の問題にさらされる可能性があります。この点についてのアドバイスとしては、i) 開発の見通しに基づいてドメイン名のポートフォリオの監査を行い、ii) サイバースクワッティングや偽造の可能性のあるケースを特定して排除するために、継続的またはただし定期的に監視を行うことが大切です。
解説
日本でもダイソンなどの有名ブランドが本物そっくりに作られた詐欺サイトに悪用されてニュースになっていましたね。消費者が被害を受け、それがブランドの信用度があってからこそ「騙されて」いるので、悪用されたブランドにとってはとても迷惑な話です。
日本では有名メーカーが今回のサイバースクワッティングのターゲットになっているようですが、アメリカではスタートアップでさえもサイバースクワッティングのターゲットになっています。
これには、SNSなどのコミュニケーションツールが普及したことでスタートアップが注目されるまでの時間が短縮されたこと、そして、スタートアップの「成長」重視の戦略には「サイバースクワッティング」対策等の知財監視体制がまったくない、または、制度が整っていないなことが多いので、急成長しているにも関わらず知財防御が甘いスタートアップがターゲットになっている印象を持ちます。
しかし、スタートアップにとってサイバースクワッティングのターゲットになるのは避けたい問題です。成長が重視される大切なときに、悪質な詐欺サイトや本家ではないSNSキャンペーン等が行われると、ブランドイメージが急激に悪化し、ユーザーや見込みユーザーの混乱を招き、成長が鈍化する恐れがあります。さらに、そのサイバースクワッティング対策のために、本来は成長のために使いたいリソースを割いたり、新たな知財対策を行わないといけないので、対策をすぐに取れたとしても、サイバースクワッティングの沈静化させ、再度成長するためには大変な努力が必要です。
このように何か起きてから対策をするのではなく、サイバースクワッティングのターゲットにされない(またはされにくい)対策を取ることがおすすめです。サイバースクワッティングを行う業者としては、同じターゲットが2つあって、ちゃんとドメインや商標などをモニタリングしているスタートアップとまったくそのようなサイバースクワッティング予防活動をしていないスタートアップであった場合、当然対策をしていない方を優先して攻撃するでしょう。
完璧な商標やドメイン監視、優秀な知財悪用防止キャンペーンを行うのはスタートアップにとっては荷が重いですが、商標やドメインに詳しい弁護士と共同して監視を行ったり、ブランディングをする際に知財周りに気をつけるだけで、だいぶ変わってきます。
事前にそのような対策が取れているか否かでサイバースクワッティングのターゲットにされる可能性が変わってくるので、スタートアップだとしても、十分知財に関する知識を持ち、問題が深刻化する前に対策を取れるような活動をすることをおすすめします。
TLCにおける議論
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まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Emmanuel Gillet. IP Twins(元記事を見る)