Blockchainのような新しい技術の特許評価 (due diligence) をする際、適切に評価するにはいくつかポイントがあります。今回はその中から必ずチェックしたいポイントをまとめました。
Blockchain技術への投資をしている会社やそのような会社の買収を考えている企業は、会社が持っている特許を入念に調べ評価するDue diligenceという作業が必要になってきます。Blockchainは新しい技術ということもあり評価は難しいですが、特に以下の点に注意してみてください。
一番気をつけてほしいのがBlockchain特許の有効性です。ここでは、先行文献による非新規性・非自明性の確認と、enablementやwritten descriptionと言った35 USC 112に書かれている特許としての開示条件を十分満たしているかをチェックします。特に、初期のBlockchain特許に対する先行例は少ないので、35 USC 112の条件を満たすためにはより多くの開示が求められる可能性があります。有効性が危ういとそれだけIPRなどで特許を無効化されてしまうリスクが高まります。
2つ目に確認する点は、divided infringementの問題です。Divided infringementとは、クレームを侵害するにあたって当事者が2人以上いなければいけない侵害です。例えば、Uberで車を手配する方法クレームがあり、そのクレームには、ユーザーからの操作が明記されているとします。そのようなクレームを侵害するには、Uberのような会社の他にユーザーがクレーム要件の一部(ユーザーの操作)を満たす必要があります。このように侵害の際に、複数のプレイヤーが存在すると、侵害立証のときにdivided infringementの問題が起こります。
Divided infringementに対するルールはまだ明確ではないので、特許権者としては避けたい問題です。誰がどのクレーム要件を行うのかという視点でクレームを見れば比較的簡単にわかる問題なので、クレームを評価する際は、Divided infringementのリスクを確認することが大切です。
次に確認する点は、オープンソースライセンスです。特許を取っていても、Blockchainが使われた商品やサービスに特定のオープンソースが使われていると、そのライセンス規約上、他社に特許技術のコピーを許してしまうような状況にも陥りかねません。すでにBlockchainが使われた商品やサービスがある場合は、どのようなオープンソースが使われていて、それぞれどのようなライセンス規約なのかをチェックする必要があります。
最後に、Blockchain技術を新しい用途に使うというような特許は進歩性に欠けることがあります。Blockchain技術は仮想通貨だけでなく、流通や身分証明など様々な用途に活用できる技術です。逆に言うと、汎用性が高い技術なので、Blockchain技術の新しい使い方などの特許には進歩性が欠けている可能性があります。Blockchainの用途だけの特許だと、有効性が危ぶまれるので、IPRなどによる特許無効リスクが高まります。
Blockchain自体は素晴らしい技術で、特許も多く出願されているので、今後は知財の分野でもBlockchain技術に関する仕事が増えてくると思います。しかし、上記のような技術的な特性や特許法上の問題点などを見逃してしまうと、いい仕事ができないので、Blockchainの特許評価を依頼された場合、少なくとも上記の4つの点については注意して見るようにしてください。
Blockchain特許の評価をしたことはありますか?
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Paul C. Haughey. Kilpatrick Townsend & Stockton LLP (元記事を見る)