アマゾンはここ数年で模倣品対策に力を入れてきました。今回の偽造犯罪対策本部は、国際的な組織なので、日本のアマゾンでも活用できると思われます。模倣品被害に困っている企業は多いので、その問題を解決するために知財関係者が中心となって活動できるといいなぁと思っています。
2020年6月24日、アマゾンは、国際市場での偽造品の取引を食い止めるために、新たに「偽造犯罪ユニット」を立ち上げることを発表しました。アマゾンによると、このユニットは「元連邦検察官、経験豊富な捜査官、データアナリスト」で構成されるグローバルチームで、アマゾンが「疑われる犯罪者に対する民事訴訟をより効果的に追求し、ブランドと共同または独立した捜査で協力し、世界中の法執行機関を支援して偽造品業者に対する刑事訴訟を行う」ことを可能にするとしており、アマゾン独自の社内データ、サードパーティの決済サービスプロバイダー、現場の資産を活用して、悪質な行為者を特定して裁判にかけることを可能にするとのことです。
アマゾンの顧客信頼・パートナーサポート担当副社長のダルメッシュ・メータ氏によると、次のように述べています。
模倣品を販売しようとする場所や彼らの所在地に関係なく、法の下で可能な限りの責任を問われることを、すべての模倣品販売者に示すものです。私たちは、起訴や資産凍結のような他の破壊措置を通じた刑事執行が、偽造犯罪を阻止するための最も効果的な方法の1つであると考え、政府に対し、偽造犯罪者を裁判にかけるために必要な調査ツール、資金、資源を与えるよう強く求めます。
この動きは、同社のオンラインマーケットプレイスで販売されている偽造品の問題に対処するためのアマゾンの最新の試みです。2017年後半、Amazonはトランスペアレンシープログラムを開始し、製造業者や販売者が商品に個別のバーコードを貼付し、Amazonはそのバーコードを使って出所を認証することができるようになりました。しかし、この方法では製造業者や販売者がプログラムに参加するために購入する必要があり、価格はバーコード1個あたり0.01ドルから0.05ドルとなっています。2019年2月、アマゾンは、拡大する偽造品の密売問題に取り組むために設計された別のプログラム「Project Zero」を発表した。Project Zeroは、Transparencyのシリアル化されたバーコードを、AI支援による商品リストの自動スキャンとセルフサービスの偽造品除去機能と統合し、ブランドが最初にAmazonにアラートを出さずに偽造品の疑いのあるリストを除去することを可能にしています。
近年、これらのプログラムを導入しているにもかかわらず、アマゾンにとって偽造品のトラフィックは依然として問題となっています。新しい犯罪取締ユニットの導入は、アマゾンの希望でもあります。
これにより、アマゾンは、疑われる犯罪者に対する民事訴訟をより効果的に追求し、共同または独立した調査でブランドと協力し、偽造者に対する刑事訴訟で世界中の法執行当局を支援することができるようになるでしょう。
解説
アマゾンはプラットフォーマーとしての立場をより強固にするため、模倣品撲滅のために大量のリソースを割いているようです。去年は、販売製品の特許侵害を判断する「Amazon Utility Patent Neutral Evaluation Procedure」というプログラムも開始しました。今回の発表は、アメリカだけではなく「国際的」な取り組みなので、日本のアマゾンでも活用できると思います。
商標やブランド系の仕事をしている方だと、模倣品対策の問題に手を焼いているクライアントも多いのではないでしょうか?その場合、Amazonのマーケットプレイスで販売されているというケースも多いのではないでしょうか?
アマゾンは企業として本格的に模倣品対策を行っているとはいえ、まだ(中小)企業が直接Amazonと連携して模倣品撲滅をするのにはハードルが高いかもしれません。そこで、アマゾンい特化した模倣品対策プログラムを提供すると喜ばれるのではないでしょうか?
日本でもAmazonはオンラインショッピングNo.1の座を得たと言っても過言ではないでしょう。そのようなプラットフォーム向けの模倣品対策サービスの需要はかなり見込めると思います。さらに、コロナ禍で、買い物がオンラインにシフトしていく中、このような模倣品対策のサービスはさらなる需要が見込めます。
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まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Marcella Ballard, Kristen Ruisi, Maria Sinatra. Venable LLP(元記事を見る)