生成AIで変わり始めた肖像権への考え方とNo Fake新法案

肖像権は現在一部の州で認められている権利です。しかし、生成AIで著名人の偽物を簡単に作れるようになってしまっている背景から、肖像権を連邦レベルで認め、幅広い権利を与えるように法整備をする動きがあります。

偽物画像の横行と新たな法案

AIは有名人のデジタル・レプリカを生成することができ、存在しない製品やサービスをおすすめしているように見せかけることができます。つい最近も、トム・ハンクスがソーシャルメディアで、彼の肖像を使ってサービスを宣伝している歯科保険が、AIが生成した偽の画像であり、彼はその会社とは無関係であることをファンに知らせるということが起きました。これは氷山の一角で、有名人にとってAIによる偽物被害は申告な問題になりつつあります。

これに対し、ミネソタ州のエイミー・クロブチャー上院議員らは、超党派による「Nurture Originals, Foster Art, and Keep Entertainment Safe Act of 2023(オリジナルを育成し、アートを育成し、エンターテインメントを安全に保つ法案)」(通称「No Fakes Act」)の草案を発表しました。この法案は、個人の画像、声、肖像のデジタル・コピーを管理する新しい権利を創設するもので、その保護は個人の死後70年間続きます。この法律に違反した者は、1回の違反につき5,000ドルの賠償責任を負う可能性があります。

この法案は、現在州法によって決定されているパブリシティ権(肖像権)に大きな影響を与えることが予想されます。ニューヨーク州、カリフォルニア州、テネシー州のように、エンターテインメントや音楽産業に近いことから、肖像権に強い保護を与えている州もあります。特に、この法案の死後権に関する部分は、ほとんどの州の肖像権法と比べて独特で、ニューヨーク州やカリフォルニア州がそれぞれ死後40年、70年の権利を定めているのと軌を一にするものです。

この法案は、憲法修正第1条の権利に抵触する可能性があり、言論の自由を制限するという意見もありますが、ドキュメンタリーやパロディについては例外が設けられています。

肖像権はAI時代に大きな変化を遂げるかもしれない

AIがさらに発展するにつれ、時代に適応しきれていない法律の分野にぶつかることになるだろうと予測されていますが、肖像権もそのひとつです。この法律がどのように発展し、さらに洗練され改訂されていくのかは、興味深いところです。

ジェネレーティブAIの急速かつ広範な導入により、法律家たちはその潜在的に有害な利用への対処に大きな関心を向けています。誰かの肖像を複製するためにジェネレーティブAIを使用することは、法的な問題が多く存在し、今後、実際に、知的財産権、著作権、プライバシー権、労働法、名誉毀損などの具体的な問題を示した訴訟が増えていくことでしょう。

参考記事:AI Deep Fakes: How Tech May Change Rights of Publicity Laws, Laura Lamansky

ニュースレター、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

chess-strategy
訴訟
野口 剛史

IPRを回避するためのヒント: 裁判地の選択

特許訴訟を起こす特許権者にとって、一番避けたいのがIPRです。今回は特許権者がIPRを避けるためにできることの1つとして、裁判地の選択を紹介します。なぜ裁判地選びが大切なのか、そしてどのような裁判地がIPRを回避するために優れているのかを詳しく見ていきます。

Read More »
money
ビジネスアイデア
野口 剛史

アメリカ中間対応をマスターする

特許事務所での売り上げ向上を考えた時、単価の高い仕事をやると言う方法がありますね。そこで、今回はアメリカ中間対応をできるようにして利益を高める方法について考えていきたいと思います。

Read More »