AIのバイアス調査であればアクセス制御されている著作物の利用も可能になる?

DMCAにはコンテンツへのアクセス制御機能の回避を禁止する条項があります。つまり、技術的にアクセス制御を回避できたとしても、そのような行為は著作権侵害になる可能性があります。しかし、これには例外があり、その例外にAIのバイアス調査目的における使用が検討されていることがわかりました。

1998年に制定されたデジタルミレニアム著作権法(DMCA)の主な特徴は、著作物を保護するために実施されたアクセス制御の仕組みの回避を禁止していることです。このようなアクセス制御の例としては、ディスクメディアや機械そのものに搭載されたコピー防止機能などがあります。著作権局は2023年10月19日、DMCAの9回目の3年ごとの見直しの一環として、この禁止に対する7つの異なる適用除外を検討し、パブリックコメントを求めていると発表しました。提案された適用除外のいずれかが最終的に承認されれば、2024年10月から2027年10月まで有効になります。

3年ごとの見直しの背景

著作権局は3年ごとに、DMCAに基づく回避禁止の適用除外案について議会に助言するため、公開規則制定を行っています。一般に、著作権局の目的は、次の3年間において、禁止事項が、ユーザがそのような著作物を非侵害的に利用する能力に悪影響を及ぼす可能性が高い著作物のクラスが存在するかどうかを判断することです。

次回の3年ごとの見直し(2023年10月19日に連邦官報で公表)のための7つの適用除外案は、著作権局がこれまでに受理した申立書に一部基づいています。著作権局は3回のパブリックコメントを行う予定です。提案された適用除外を支持する人、または支持しないが証拠となる情報を提出したい人は、2023年12月22日までに意見を提出しなければならなりません。適用除外案に反対する人は、2024年2月20日までに反対意見を提出しなければなりません。適用除外案を支持する人、および適用除外案を支持も反対もしない人からの反論コメントは、2024年3月19日までに提出しなければなりません。

AIによるバイアスを調べるための著作物の利用

著作権局がコメント募集したAI関連の適用除外案は、「研究者」が、著作権で保護された生成AIモデルへのアクセスを制御する技術的保護手段(technological protective measures、TPM)を、モデル内の「偏りを研究する目的のみ」で回避することを認めるものです。この免除案は、「偏りを明らかにし、それに対処する研究、技術、方法論を共有する」ことも許可します。

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この適用除外の提案は、情報技術セキュリティ・コンサルティング会社であるChinnu Inc.のジョナサン・ワイス氏によって提出された(ワイス提案):「AIによる意思決定がますます我々の日常生活に影響を与える時代において、これらの意思決定が公正で偏りのないものであることを保証することは、単に技術的な必要性だけでなく、社会的な要請です。この免除を認めることで、責任あるAI研究を促進し、すべての人にとってより公平で安全な未来を確保することができます。」ワイス提案には、適用除外を提案する4つの理由が含まれています:

  • 公共の利益:AIモデルの偏りを調査することは、公平性を確保し、差別を防ぎ、社会的価値を守るために最も重要
  • 知識の加速:研究者は、法的な影響を常に恐れることなく、バイアスを発見し、理解し、修正することができる
  • セキュリティへの影響:偏ったAIシステムは悪用されたり、ゲーム化されたりする可能性がある。こうした偏りを理解することは、システム全体のセキュリティを向上させる上で極めて重要なステップ。
  • 透明性の高いAIの推進:調査し、結果を公表する自由があれば、AI研究コミュニティはAI開発の透明性と説明責任を高めるよう働きかけることができる

著作権局は、この提案を公表するにあたり、ワイス提案では「研究者」がどのように定義されるのか、また、偏りを研究するために回避する必要があるようなTPMがAIモデルによってどのように使用されるのかが明記されていないと指摘しました。しかし、ワイス提案は、この適用除外案の悪用を防ぐために、3つのガードレールを提示しています:

  1. この適用除外は、「主な意図がバイアスを特定し対処することであり、バイアスを悪用することではない」場合にのみ適用される
  2. どのような研究であれ、「データのプライバシーを優先し、個人情報や機密情報が漏洩しないように」しなければならない
  3. 研究者は、「発見されたバイアスに対処するために、AI開発者や利害関係者と積極的に関わる」べき

著作権局は、提案された規制文言を含め、ワイス提案を採用すべきかどうかに関してコメントを求めており、特に、DMCA免除に必要な、関連するTPMとその存在が非侵害用途に悪影響を及ぼしているかどうかを説明するよう、コメント提供者に求めています。また、TPMの回避を必要としない別の経路を通じて、適格なユーザーがAIソフトウェアにアクセスできるかどうか、および提案されている利用が非侵害である可能性が高いと結論付ける法的根拠を明らかにするよう、コメント提供者に求めています。

要点

AI免除案は、著作権法がAIとどのように交錯しているのか、著作権局がどのように取り組んでいるのかを示す新たな例です。ワイス提案は狭いAIのユースケースに限定されていますが、この提案について著作権局が受け取る意見は、AI問題に対する著作権局の広範な見解を形成する際に影響を及ぶすかもしれません。

参考記事:Copyright Office To Consider AI Proposal as Part of the Current DMCA Triennial Review

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