商標近代化法 (TMA) 施行後6ヶ月の教訓

2021年12月18日に施行された商標近代化法(Trademark Modernization Act: TMA)ですが、施行されてから6ヶ月となった今、USPTOからベストプラクティスに関するガイダンスがいくつか発表されていますのでその概要を説明します。

TMAで新しい手続きが導入された

商標近代化法(TMA)の施行に伴う知っておきたいルール変更の概要と実務対策に関しては1月に記事を書いていますが、簡略に説明すると、TMA が制定されたことにより、新しい抹消手続き(Expungement Proceeding)と再審査手続き(Reexamination Proceeding)が導入され、さらにTTAB手続きにおいて「不使用」が新しい取消事由として追加されたことで、不使用による商標登録に対抗するための選択肢が増えました。

TTABでの取消は、比較的よく用いられる手続きです。放棄ではなく、不使用に基づく取消の新しい根拠は、登録後3年経過すればいつでも取消訴訟を起こすことができることを意味します。また、使用再開の意思がないことを証明する必要はなく、商標が一度も使用されていないことだけを証明すればよいので証拠面でも取消に有利なルールになっています。TTABのすべての手続きと同様に、当事者は連邦民事訴訟規則(the Federal Rules of Civil Procedure)と連邦証拠規則(the Federal Rules of Evidence)を適用し、ディスカバリーに参加することができますが、これは新しい一方的な手続き(ex parte proceedings)ではオプションではありません。

登録者が取消訴訟に対して応答しないことを選択した場合、申立人は、取消訴訟の申立から3ヶ月という早さで不履行判決(default judgments)を受けることが多いです。しかし、申し立てられた不使用に異議がある場合、これらのケースは、他のTTABケースと同様の経過をたどり、両当事者にとって負荷の高い手続きになります。

登録抹消手続きや再審査の手続きを検討している当事者にとって、USPTOは早ければ出願から6週間以内に審査を行っていますが、それ以上かかるケースもあるようです。USPTOが手続を開始した場合、登録者は最長4ヶ月以内に応答することができます。

平均的な再審査または抹消の手続きにかかる期間を確認するにはまだデータが少ないですが、特に登録者が回答期間をフルに活用した場合、手続きは少なくとも6カ月、場合によってはそれ以上かかる可能性が高いと思われます。しかし、申立人にとっては、再審査または抹消手続きが開始されると、これらの手続きは一方的な手続き(ex parte proceedings)のため、その後のプロセスにおける役割はありません。TTABでのディスカバリーなどに関与する必要がないことは、一部の申立人にとって有益であると思われます。

USPTO直伝のベストプラクティス

USPTOと実務者がこの新しいプロセスに携わるにつれ、知見が深まり、手続きに関する実務的な問題点や対応策がわかってきます。また、そのような知見を広くしってもらうように、USPTOは「ベストプラクティス」を発行し、よくある間違いについて実務者を教育することがあります。

今回は、USPTOの公式TMAサイトと、「不使用」に関する抹消手続きの解説をしている公式のプレゼン資をベースに「ベストプラクティス」を紹介します。

まず、現在までに、100件強の登録抹消または再審査の申請がUSPTOに提出されており、これらはすべて一覧としてまとめられており、閲覧可能です。そのため、実際の手続きの中身を見ることによって、手続きにおける詳しい調査ができるようになっています。

さらに、USPTOは、提出された書類に基づき、スクリーンキャプチャやURLが小さすぎて読めない、または、各証拠の関連性を説明する証拠インデックスを提供していないなど、多くの共通した誤りがあることを指摘しています。

また、USPTOは、現在および過去の不使用の証拠を探しており、これはarchive.org(WayBackマシン)などのウェブサイトから取得できる場合があります。

他の登録を引用する場合は、Trademark Status Document Retrievalのサマリーから参照するだけでなく、実際のドキュメントを提供する必要があります。

また、クラス内で異議を唱えた各項目について証拠を提供する必要があるので、注意してください。

最後に、オリジナルの標本が偽物である、またはデジタルで変更されたという証拠があれば、標本が提供された商品またはサービスに対する不使用の一応の証拠(prima facie case)を立証することも可能です。

ベストプラクティスの情報タブを定期的にチェック

USPTOは、公式TMAページにベストプラクティスに関する情報を開示するセクションを作りました。

すでに、TMAにおける手続きをするために有益な情報があり、今後も定期的にアップデートされると思われるので、今回のTMAで導入された新しい抹消手続き(Expungement Proceeding)と再審査手続き(Reexamination Proceeding)に興味がある方は、この「ベストプラクティス」を活用してみてください。

参考文献:Lessons from the first six months of the Trademark Modernisation Act

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