大きな変化の兆し?海外の直接侵害が損害賠償に加算され賠償金が数倍に膨れ上がる?

連邦地裁の判事が最高裁の WesternGeco 判決を受け、海外における直接侵害が損害賠償に加算されるという見解を示しました。もしこの見解が正しいなら、35 U.S.C.§ 271(f)におけるInduced infringementでの特許侵害という特殊なケースにしか適用されないと思われていたWesternGeco 判決が一般的な35 U.S.C.§ 271(a)における直接侵害にも適用されることになります。

侵害品を世界中で販売している場合、アメリカの販売のみでなく、世界中の売り上げに対して損害賠償が請求される可能性があります。アメリカ国外の販売が多い会社は特に注意するべき案件です。

そもそも最高裁の WesternGeco 判決とは、2018年6月22日に最高裁が下した判決で、35 U.S.C. § 271(f)(2)における侵害を証明した特許権者は、35 U.S.C. § 284における海外での逸失利益(lost profits)も取り戻せるとしたものです。わかりやすく言うと、一部の特許侵害において、海外の売り上げに対しても損害賠償を請求できるようになったということです。

通常、アメリカの特許はアメリカでしか効力がなく、日本や他の国では権利行使できません。アメリカでの特許侵害が認められた場合、アメリカにおける売り上げなどで損害賠償金額が決まります。しかし、WesternGeco 判決では、アメリカにおける侵害だけでなく、35 U.S.C.§ 271(f)におけるInduced infringementにおいて、海外における侵害活動についても損害賠償に加算しました。

WesternGeco 判決では、侵害者が競合するシステムの部品をアメリカ国内で生産し、海外の顧客に販売していました。その部品は海外でシステムの中に盛り込まれましたが、そのシステムがアメリカで組み立てられていたら特許権者の特許を侵害するものだったので、35 U.S.C.§ 271(f)におけるInduced infringementが成立しました。

WesternGeco 判決はこのような特殊な侵害ケースに海外での侵害も損害賠償に加算されるとしましたが、今回のPower Integrations, Inc. v. Fairchild Semiconductorでは、WesternGeco のコンセプトをより一般的な35 U.S.C.§ 271(a)における直接侵害にも適用した案件になります。

Power Integrations事件は15年近く争われている案件なので詳しくは説明しませんが、WesternGeco 判決以前に、地裁で全世界における売り上げをベースに$34Mの損害賠償請求がありましたが、その後、アメリカにおける売り上げのみに賠償金額を加算するべきということで、損害賠償請求金額が$6Mまで下がりました。

その後、上訴され、CAFCはアメリカにおける売り上げのみに賠償金額を加算するべきという見解を支持し、アメリカにおける売り上げのみを考慮し、直接侵害の賠償金の金額に関する裁判(new trial)をするように地裁に命じました。

その後最高裁でWesternGeco 判決があり、地裁のLeonard P. Stark判事は、WesternGeco判決は、CAFCによる判決を覆すものであり、WesternGeco判決に従い全世界における売り上げをベースに損害賠償請求金額を決めるべきだという見解を示しました。

このStark判事の見解が正しいものだとしたらアメリカの特許法に基づく損害賠償請求の金額に大きな変化をもたらします。今回のPower Integrations事件のように、賠償金額が数倍、もしくは数十倍に膨らむ可能性もあります。

地裁でどのような結果になるにしろ、この案件がCAFCに上訴されることはほぼ確実です。CAFCでStark判事の見解が支持され、WesternGeco判決が直接侵害にも適用されるとなると、アメリカ特許の直接侵害を証明するだけで、世界中の売り上げを対象にした損害賠償請求ができることになります。

今後この案件の展開次第では特許損害の賠償金額が数倍、数十倍になる可能性があるので、今後もこのPower Integrations事件を注意深くフォローしていく必要があります。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Adam P. Samansky and Alexander G. Roan. Mintz (元記事を見る

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