みなさんもご存じのブログです。ブログは文字ベースの専門的な情報を発信するのに適しているので、弁理士のような専門性が必要な業種と相性がいいメディア媒体です。「知財 ブログ」で検索すると 7,840,000件ヒットしますが、どれもサイトへのトラフィックは少なく、更新もままなっていないものでもトップページに来てしまうのが現状です。


今回は、OLCサイトの運営経験も踏まえて、知財の専門家としてのブログ活用方法を紹介します。
知財専門ブログの特徴:
Who(誰がやる?): 事務所を経営している弁理士さん、そこで働いている弁理士さん、情報配信したい知財関係者だれでも。
What(何をする?): 自分の業務に特化した専門情報の定期的な配信。ここでのキーワードは「特化した専門情報」と「定期的」です。詳しくは後ほど。
Where(どこで?): オンラインです。でも、オフラインでも自分の宣伝に積極的に活用します。
When(いつはじめるか?): 今でしょう。ネットの環境が整った今、始める障壁はないです。しかし、続けていくにはコツがあると思います。
How(どうやって?): このような専門ブログは、コンテンツが命です。どうやって日頃話題にするネタを集めるのかが重要なポイントになってきます。
Why(そもそもなんでやるの?): SNSとスマホが普及して個人が簡単に情報発信できるようになった今、自分で情報配信していない人は淘汰されていく世の中になったからです。
ブログの目標:
私たち知財プロフェショナルにとって、ブログは自分のブランドを確立するためにあります。そもそも知財自体がニッチ市場なので、サイトのトラフィックを上げてくために広告を打ったり、ブログ記事に週刊誌のような過激的なタイトルをつける必要もありません。そうではなく、ほんの一握りの人に自分のファンになってもらえばいいのです。
専門的な分野でファンを作るということは、ある特化した話題のご意見番になるということです。知財という小さな市場の中でも更に特化した話題を提供して、その小さな分野でご意見番になることができたらそれでいいのです。少ないけれども固定ファンを作る。地下アイドルではないですがブログでそれができれば十分です。
また自分の専門分野の情報発信を発信していれば、それ自体が自分の名刺になります。ごく一般的な名刺や情報が全く更新されていないウェブサイトでは何も伝わりません。自分がどんな人で、どんな経験があって、どういう考え方を持っているのか、役立つブログ記事を通して知っていてもらえれば、会ったときの印象も違います。また、自分が情報発信していることを知らない人に会っても、ブログサイトを紹介することで話のネタにもなるし、他の弁理士との差別化にもつながります。
今後知財業界で食べていくには、専門分野を見いだし、他事務所と差別化を図り、自分のスキルを興味のありそうな人に伝えていく必要があります。当たり前の話ですが、特許のような技術に対する理解が重要な仕事を依頼する場合、「何でもやります」という事務所よりも「あなたが携わっている技術に詳しいです」という事務所の方が優先されますね。
ブログを通じて自分の得意分野に関する情報を定期的に配信していれば、あなたのスキルを必要としている人があなたを見つけてくれます。そこから仕事の話になれば、相手はすでに自分の専門性を理解してくれているので話が早く進みます。ブログを読んで仕事の話を持ちかけてくれる人はすでにあなたのファンです。
つまり、ブログで自分のブランドを確立していれば、ビジネスチャンスが勝手に舞い込んでくるようになるのです。
自分のブランドを確立するには?:
さて、知財プロフェショナルのブログの役割がわかったとこで、どうやったらブログを使って自分のブランドを確立できるか考えてみましょう。
ブログを使って自分のブランドを確立するには、自分の業務に特化した専門情報を定期的に配信することが必要です。ここでのキーワードは「特化した専門情報」と「定期的」です。
よくあるのが知財系のネタが少なすぎて関係ないトピック(例えば、最新のガジェットとか)に話が脱線してまとまりのないブログになってしまうことです。知財でも話題を探すのに大変なのに、さらに自分の技術分野や顧客セグメント(中小企業、スタートアップなど)に絞った話題を見つけるとなると至難の業です。安定した情報源を確保できていないと、「特化した専門情報」だけのブログを運営していくのは難しいです。
次に起こる問題が、ブログ記事を「定期的」に書けないことによる更新の後れ。これは死活問題で、検索に引っかかってトップページに来るブログでさえ、更新が月一程度だったり、数年前から全く更新されていないサイトも多々あります。この問題は、上の「ネタがない」ことと、本業との両立ができずにブログ更新がおそろかになってしまうことの相乗効果で起こります。
しかし、定期的に特化した専門情報を配信していかないと、ブログは私たち知財プロフェショナルにとって、ただ時間と労力を無駄にしてしまった負の遺産になってしまいます。ブログは成果が出るまで時間がかかるので、根気よく続けられるシステムの構築が重要になります。
例えば、OLCはアメリカ知財情報を日本語で配信しています。知財の中でもアメリカに限定された専門情報を日本の弁理士さんや知財関係者用に配信しています。また、毎週4ー5個記事を出しているので、更新も定期的にできています。
今でこそテーマも絞り込めて、定期的に配信できるようになりましたが、最初はテーマを絞ったり、定期的にネタを集めるのに苦労しました。
私の場合、アメリカの事務所や知財団体が発行している情報を効率的に集め、厳選していくことにより、定期的に情報配信ができるようになりました。また、続けていくとトレンドのようなものも見えてきてどんな記事を書いたらいいのかもわかってきました。
自分のスキルを生かせるテーマを見つけて定期的に情報発信するには時間がかかります。また、始めた時のテーマを変えることもあるでしょう。でもそれでいいんです。やってみてうまくいかなかったらやり方を変えればいい。その繰り返しでより良いものが出来上がってきます。
最後に、記事にオリジナリティは必要ありません。特に始めたばかりの時は自分のスタイルが確立されていないので、自分のカラーを出すのは難しいです。それよりも、参考にした情報をまとめたり、読んでほしい人のレベルにあった内容に変換する作業に集中してください。このような作業を続けていくことで次第に自分のスタイルが確立されていきます。
コストやリソースについて:
ブログは最低ゼロ円から始められますアメブロなどの無料サイトは数分で開設できます。また自分でwordpressなどを使って独自のサイトを作っても、年間数万円程度です。なので、ブログを始めるにあたり金銭的なハードルはほぼ無いと言っていいでしょう。
次に考えるのがリソースの問題。ブログはその性格上コンテンツを定期的にアップしないといけないので、毎週一定時間を記事の作成に使わなければいけません。個人的には最初の3ヶ月ほどは試行錯誤で時間がかかり効率が悪かったです。なので、最初に始める前に記事を20個ぐらい書いておいて初めてから慣れるまで貯めておいた記事を小出しに出していました。
最後に自分の肩書きを失うリスクについて話します。これは自分が変なことを言って自分の今の立場が危うくなってしまうリスクのことです。私も実際に投稿する前はこのリスクが頭をよぎりネットに自分の書いたものを出すことに抵抗感を感じていました。しかし、実際のところ他人はまったく気にしません。特許という小さい業種で炎上するということはなかなかないし、逆に炎上するレベルの注目度が集まることはすごいことだと思います。個人的には、やって失敗するリスクよりもやらないで後悔するリスクの方が大きいと思います。
ビジネスの展開方法やpivoting (事業変更) の可能性:
最後にブログを始めたあとのことについて話します。ブログが軌道に乗ってきたら、ブログ以外にも展開しましょう。理由は、ファンと接点になるチャンネルは多い方がいいです。
例えば、専門的なブログと相性がいいのがemailベースのニュースレター。ブログを気に入ってくれた人がニュースレターを購読してくれれば、その人のメールアドレスが得られます。購読者数はモチベーションにもなるし、メールボックスに記事を定期的に送ることで存在感をアピールできます。その他、ツイッターやFacebookなどのSNSもいいですね。
またブログでは説明しきれない大きなテーマ取り扱う場合、ウェビナーやオフ会の勉強会もいいアイデアです。特にブログのファンが近くにいる場合、実際に会って交流が深められるイベントができたら最高です。
反対に自分一人でブログをやり続けるのが難しくなったら、スタイルを変えて仲間と一緒にやったり、OLCなどの他の知財ブログへのゲスト投稿に切り替えるのはどうでしょう?自由度は減りますが、他の人と協力するとシナジーが期待できます。
まとめ
誰でもネットで意見できる環境が整っている中、情報発信している人に注目が集まるようになりました。今までのような巨大メディアではなく、個性的な個人に注目が集まりやすい環境が整ってきたのです。これは知財プロフェッショナルにとっていいニュースです。
知財プロフェッショナルは、自分の得意分野に関するブログをやるべきです。特化した専門知識に関する情報を定期的に配信することによって日本にいる数多くの弁理士の中から自分を差別化でき、自分のブランドが作れます。
ブログを通して自分を知ってもらえたらビジネスチャンスにもつながり、自分の仕事を知ってもらえるユニークな宣伝材料にもなります。
ブログでファンベースが作れれば、さまざまなことに展開できます。これからはお金ではなく、フォロアーの大きさでできることが変わってくる時代になりつつあります。