トレードドレスは登録前でも保護対象に

登録されたトレードドレスには、登録日以降、二次的な意味(secondary meaning)が備わっていると仮定されます。それにより商標権上の保護が得られるのですが、登録日以前のものでも二次的な意味が証明できれば、商標権上の保護が受けられる場合があります。

ファッションなど外見が重要な商品にはトレードドレスの保護が有効な場合があります。見た目が重要な商品を販売している場合、ここで紹介する CAFC の判例を元に登録前でもトレードドレスによる保護が受けられるか検討してみてください。

背景

靴などのファッションを扱っているコンバースが主力製品の1つである All Star shoes に関するトレードドレスの権利行使を ITC でおこないました。コンバースはトレードドレスで保護されている特徴を1932年から自社製品に使っていましたが、実際にトレードドレスを登録したのは2013年になってからでした。

ITCにおいて、コンバースは連邦商標とコモン・ローにおける保護の両方を主張し、侵害品の輸入規制を求めました。しかし、ITC は最終的に対象となっているトレードドレスは二次的な意味を得ていなかったとして、商標(トレードドレス)を無効にしました。

CAFCにおける判決

しかし、今回 CONVERSE, INC. v. ITC において、CAFC はコンバースのトレードドレスは二次的な意味を得ていなかったという ITC の判決を棄却しました。CAFC は商品のでデザインに関するトレードドレスは本質的に独特である(inherently distinctive)という扱いを受けることはないが、登録以前でも二次的な意味を得る場合があるとしました。つまり、登録前でも二次的な意味をすでに得ていたと証明できれば、登録前のトレードドレスでも商標の保護対象になるとしました。

またCAFCは、登録以前の侵害については、申立人が侵害が疑われる会社が侵害行為を始める前に、未登録のトレードドレスに二次的な意味が備わっていたことを証明する必要があるとしました。しかし、登録後に始まった侵害行為に対しては、すでに登録済みのトレードドレスには二次的な意味が備わっていると仮定される(presumption of secondary meaning)ため、登録後の侵害行為に対対する権利行使には二次的な意味の証明は不要としました。

つまり、トレードドレス登録後に始まった侵害行為の場合、二次的な意味の立証は不要ですが、登録以前の侵害行為に対しては、侵害行為が始まるまえに二次的な意味がすでに備わっていたことを証明しなければなりません。

CAFC は、未登録時点でのトレードドレスが二次的な意味を得ていたかを判断するために、以下6つの要点を用いるテストを示しました。

  1. 実際の購入者によるトレードドレスと生産者の関連性の度合い(これは主にアンケート調査を用いて示します。)(association of the trade dress with a particular source by actual purchasers (typically measured by customer surveys))
  2. 使用期間、頻度、排他性(length, degree, and exclusivity of use)
  3. 宣伝の量と方法(amount and manner of advertising)
  4. 売り上げと顧客数(amount of sales and number of customers)
  5. 故意の模倣(intentional copying)
  6. トレードマークを有した製品のメディアの関心(unsolicited media coverage of the product embodying the mark)

また、要点2の使用期間、頻度、排他性に関しては、最初の侵害行為があった時から5年前までの期間におけるトレードドレス所有者と第三者の活動状況が最も重要だとしました。

CAFC は、この案件を ITC に差し戻し、この6つの要素を用いてコンバースのトレードドレスに二次的な意味(secondary meaning)が備わっていたを判断するよう命じました。

この案件は珍しい商標(トレードドレス)の侵害による ITC 調査の上訴です。トレードドレスは商標の業界ではホットな話題なので、差し戻された ITC で
この CAFC によるテストがどのように適用されるのか見どころです。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:   Mark Kachner and Shuchen Gong. Knobbe Martens  (元記事を見る

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