アメリカ政府が中国と台湾の会社を企業機密搾取で起訴

アメリカ政府による中国をターゲットにした企業スパイ取り締まりが強化されています。アメリカ法務省は中国と台湾にある会社2社と3名を企業機密搾取、共謀、企業スパイなどの罪で起訴しました。これは最近大きな動きがあるアメリカ政府による中国の産業スパイに対する取り締まりの一環で行われたものと見られています。

関税などアメリカと中国の摩擦が大きくなるなか、アメリカ政府は中国をターゲットにした企業スパイ取り締まりも強化しています。日本の企業でもアメリカが重要と思われるような技術に対して中国に投資している場合は、間接的にこの企業機密取り締まり強化の影響を受けるかもしれません。

起訴状によると、被告はアメリカに本社があるMicron Technologies, Inc.からDRAMに関する企業機密を盗んだ疑いがもたれています。DRAMはアメリカ商務省によりアメリカ軍事に関する重要な部品の1つと位置づけられています。起訴状によると、中国政府はDRAMの供給を国外に依存しているため、最先端のDRAMの国内生産能力を得ることを国の最重要課題の1つとしているということでした。

起訴状によると、起訴された台湾にあるUnited Microelectronics Corporation (UMC) と中国の国営Fujian Jinhua Integrated Circuit, Co., Ltd. が新しい DRAMの開発に関する契約をおこない、後に、アメリカに本社がある MicronのDRAMに携わっていた元従業員3人を雇いました。更に起訴状では、この元従業員には、Micronを退職する前に、Micronの機密情報にかかわるファイルを大量にダウンロードした疑いがかけられています。

このMicronの機密情報を悪用し、被告が最新のDRAM技術の開発を進めた疑いがかけられていて、被告が出願した特許5つの内容にもMicronの機密情報と同じ、または、それに非常に近い開示がなされていたとのことでした。

また、この起訴とは別に、法務省は、被告企業のUMCとJinhua のDRAM製品が含まれている製品のアメリカへの輸入を防ぐ差止命令を求める民事訴訟も起こしています。

この起訴で、ここ3ヶ月でアメリカ法務省が中国の企業スパイに関して起こした訴訟は4つ目になります。以下は残りの3つの訴訟の概要です。

  • アメリカとヨーロッパの航空技術に関わる防衛コントラクターから情報を盗もうとした疑いでJiangsu Ministry of State Security (JSSD)に勤務する職員10人を起訴 。(Oct. 30, 2018)
  • アメリカの防衛コントラクターを含むアメリカのエンジニアや科学者をJSSDに入れるために手助けをしていたとして、シカゴ在住の中国人を起訴。 (Sept. 25, 2018)
  • ターバイン技術に関するGEの企業機密を盗んだ疑いでNew Yorkに在住のGEのエンジニアを起訴。 (Aug. 1, 2018)

法務省は中国による企業スパイは急増していて早急な対応が必要だと発表しました。このような事例を受け、法務省では、中国による企業機密搾取取り締まり強化を発表。今後もより多くの中国政府関連の企業機密搾取案件が起訴されることが予想されます。

法務省は大統領の管轄で、政治的な主観を持つ組織なので、この中国による企業スパイの「急増」がどれだけ正確な情報かはわかりかねます。しかし、今後の取り締まり強化は避けられません。日本企業としては直接影響はないと思いますが、アメリカが重要視している技術に対して中国で投資をおこなっている場合、間接的に影響があるかもしれません。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Astor Heaven and Robert B. Kornweiss – Crowell & Moring LLP(元記事を見る

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