新しい判事の加入で最高裁の知財案件に対する考え方は変わるか?

2018年7月31日にKennedy最高裁判事が引退したことにより、現在の最高裁判事の人数は8人になりました。人数が偶数になり、最高裁判事のそれぞれの考え方の違いから、難しい法律の問題に対して4対4という状態を作らないためにも、早く「空席」を埋める必要があります。以下で説明しますが、現在の候補は特許擁護派だと思われます。

背景

トランプ大統領は、最高裁判事の候補としてBrett Kavanaugh判事を指名しました。Kavanaugh判事はYale Law School卒で、高裁判事として過去12年間働いており、現在はthe United States Court of Appeals for the District of Columbia Circuitの判事です。Kavanaugh判事は、保守的な判事として知られており、法律の解釈の際に、議会での議論の記録や法律が成立したときの状況を重視しる人で、現在の観点からの法律解釈はあまりしません。特にDC時代には、行政機関の権利・管轄について特化して案件を扱っていた傾向があります。

行政機関とは?

行政機関とは、議会が大まかな枠組みを作り、その枠組みに沿うような細かなルールを行政機関が作り、その元で運営していくという仕組みが取られています。知財で言うと、 PTAB も含む特許庁や ITC は行政機関の1つです。

また、行政機関は一部の法的な問題にたいする判決もできます。この権限は、Chevron Deferenceと呼ばれ、最高裁判決Chevron U.S.A., Inc. v. Natural Resources Defense Council, Inc., 468 U.S. 837 (1984)に由来します。この判決で、最高裁は、行政機関による法的な問題の判決を認めたため、行政機関は法的な問題の判決に大きや役割を果たすようになりました。知財で言うと、 PTAB における IPR では特許という法的な権利を無効にできます。これも特許庁という行政機関に与えられた権限の1つです。

Kavanaugh判事の行政機関に対する考え方

Kavanaugh判事の行政機関に対する考え方は今後の特許庁のあり方に大きな影響を与える可能性があります。その影響は IPR などの個別の手続きだけにとどまらず、35 U.S.C. §101の“abstract ideas” に関する判決、更には、 PTAB 自体にも影響をおよぼしかねません。

Kavanaugh判事の過去の判例から、彼は行政機関によって解決できる法的な問題を制限していく傾向があります。(e.g., Settling Devotional Claimants v. Copyright Royalty Bd.; Indep. Producers Grp. v. Librarian of Congress; Soundexchange, Inc. v. Librarian of Congress; Recording Indus. Ass’n of Am., Inc. v. Librarian of Cong.; and others). また、この傾向は、 Harvard Law Schoolの Jody Freeman教授のコメントからも伺えます(“Judge Kavanaugh’s record suggests that he has no hesitation deciding when agencies are out of bounds and don’t deserve deference.”)

残念なことに、 CAFC のみが特許の上訴を扱うので、DC高裁であるKavanaugh判事がどのように特許関連の案件について判断するかはわかりません。現在、最高裁では、知財関連のケースが2件あります。もし、Kavanaugh判事の最高裁加入が上院で認められ、その口頭弁論までにKavanaugh判事が正式に最高裁に加入すれば、Kavanaugh判事の知財に関する考え方がわかってくると思います。彼の保守的な考え方により、Kavanaugh判事は、特許法が作られたアメリカ設立初期の考えを重んじると思われるため、Kavanaugh判事は特許擁護派だと思われます。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Levi Brown. Workman Nydegger  (元記事を見る

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