訴訟が行われている場合、訴状が送られてから1年以内にIPRの申し立てを行う必要があります。35 U.S.C. § 315(b)。しかし、訴訟の進み具合によっては、その1年の期限内に申し立てを行っても、IPRが却下されてしまうことがあります。 NHK Spring Co. v. Intri-Plex Techs., Inc., Case IPR2018-00752, Paper 8 (PTAB Sep. 12, 2018).
背景
Intri-Plex Technologies, Inc. はNHK Spring Co. と NHK Internationalを特許侵害でthe Northern District of Californiaに訴えます。この訴状がNHK Internationalに正式に送られたのが2017年3月9日のことでした。その後、訴訟は進み、2018年1月29日にクレームコンストラクションに対する公判があり、2018年2月2日にはクレームコンストラクションの判決がありました。また、最終公判が2019年3月25日に予定されていました。
このような状況の中、NHK Springが訴訟が始まってから1年以内である2018年3月7日にIPRの申し立てを行います。このことに対し、特許権者であるIntri-Plex Technologies, Inc. は、訴訟の進行状況を理由に、IPRを今行うことは効率的でない(inefficient )と主張し、PTABはその主張を受け入れました。
PTAB は現状でIPRを行うことはPTABのリソースを有効活用するものではないとしました。PTAB は、訴訟がすでにだいぶ進んでいて、エキスパートのディスカバリーが2018年11月1日に終わることや2019年3月25日にすでに最終公判が予定されていることに注目。その反面、IPRが行われれば、2019年9月まで待たないと判決が出ないとしました。また、PTABは同じ先行例文献が用いられていることも指摘。このような状況では、AIAで定められたIPRの目的を達成できないので、IPRは行うべきではないと結論づけました。
教訓
IPRの申立人も特許権者も1年の期限内にIPRが提出されたからといって、IPRが開始されると仮定するべきではありません。また、IPR申立人(進んでいる特許訴訟の被告人)は、IPRの申立書を提出するタイミングを訴訟の進行状況を考えつつ、慎重に検討する必要があります。特に、訴訟が早く進む裁判地である場合、なるべく早くIPRを検討する必要があります。一方、特許権者は、訴訟が順調に進んでいるのであれば、IPRは不効率だと主張し、IPRを阻止できるか検討することをおすすめします。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Marc S. Blackman. Jones Day (元記事を見る)