前文(Preamble)がクレームを限定する条件

アメリカ出願をチェックするときに冠詞や前文を気にしたことがありますか?今回はそんな一見些細に思えるようなことがCAFCまで争われたケースを紹介します。

判例:SHOES BY FIREBUG LLC v. STRIDE RITE CHILDREN’S GROUP

要約:関連する2つの特許の類似のクレームにおいて、1つの前文(Preamble)は、後続の構造的クレームの制限に先立つ根拠を提供したために制限的であり、先立つ根拠を提供しない別の前文は制限的ではなかった。

背景

Firebugは、履物照明システムに関連する2つの特許を侵害しているとしてStride Riteを提訴しました。これに対し、Stride Rite社は、主張されたすべてのクレームの当事者間審査(IPR)を申請しました。

審査会は、審査を開始した後、異議のあるクレームを自明であるとして特許を無効としました。Firebugは上訴し、審査会は、独立した請求項の前文を非限定的なものとして解釈したことが誤りであると主張しました。特に、Firebug社は、前文の「Internal illuminated textile footwear」というフレーズの中の「Textile」という用語がクレームを限定し、先行技術と区別していると主張しました。

CAFCにおける判決

連邦巡回控訴裁(CAFC)は、最初の特許について、独立請求項の本文が前文の直後に「a footwear」を再導入しており、請求項は前文なしで構造的に完全な発明を暗唱していると指摘しました。したがって、前文は限定的ではなかったと判断されました。

対照的に、2つ目の特許の独立クレームは、前文の後に「footwear」を再導入せず、代わりに、後続の構造的クレームの限定において、前文の「textile footwear」という文言に先行的根拠を依拠していました。この結果、2つ目の特許の前文は限定的であったと判断されました。

連邦巡回控訴裁は、第2の前文を限定的でないものと解釈したことで誤りを犯したが、連邦巡回控訴裁は、先行技術が「textile」footwearの使用も開示していたと判断し、その判断は実質的な証拠によって裏付けられていたため、誤りは無害であると判断しました。このように、連邦巡回控訴裁は、両特許に関する審理委員会の判断を肯定しました。

解説

結果、両方の特許は無効のままでしたが、全文(Preamble)に関する判例としては面白い結果だったと思います。

早速、クレームを見てみましょう。

まずは1つ目の特許から

1.       An internally illuminated textile footwear comprises: a footwear; the footwear comprises a sole and an upper; an illumination system; the illumination system comprises a power source and a plurality of illumination sources; a liner; a structure …

2つ目の特許は

1. An internally illuminated textile footwear comprises: a sole and an upper; an illumination system; …. the illumination system being housed within the footwear; and the plurality of illumination …

となっています。

1つ目の特許クレームは、An internally illuminated textile footwear comprises: a footwear; the footwear comprises となっており、前文(Preamble)がcomprisesで終わったあと、a footwearと続いており、そこから、the footwear comprises… と続いています。

前文(Preamble)がクレームを限定するという解釈をするには、前文と前文後のクレーム要素がリンクしている必要があります。しかし、前文の直後に不定冠詞 “a”を用いたa footwearが記載されているので、それ以降のthe footwearはこの前文の直後のa footwearにリンクしていると考えられます。そして、不定冠詞なので、a footwearと前文に書かれている“An internally illuminated textile footwear”はリンクしておらず、前文が限定的でないという判断になりました。

一方、2つ目の特許クレームは、1. An internally illuminated textile footwear comprises: a sole and an upper; an illumination system; …. the illumination system being housed within the footwear; and the plurality of illumination … となっていて、クレーム本体にある“the footwear”にリンクする別のa footwearが同じ本文の前にないので、前文のAn internally illuminated textile footwearとリンクしていると解釈でき、この場合、前文が限定的であるという判断になりました。

定冠詞、不定冠詞を含む冠詞の概念は日本人には難しいものですが、そのような一見些細に思えるようなことでも、今回の様にクレームでは大きな解釈の差に発展することがあるので、アメリカ出願のクレームをチェックするときは冠詞や前文(Preamble)がクレームを限定するような構成になっているのか(なっているのであればそれが意図的なモノなのか)を確認するといいですね。

質問:アメリカ出願をチェックするときに前文(Preamble)の限定や冠詞を気にしたことはありますか?

TLCにおける議論

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まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Aaron Johnson, Jeremy Anapol and Paul Stewart. Knobbe Martens(元記事を見る

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野口 剛史

知財あるあるを漫画化

知財について学ぶのは結構大変ですよね。私もアメリカのPatent Agentの試験の時に使った教材のボリュームと専門用語にかなり振り回されました。知財のプロとして活躍していくには専門性の高い情報を常に得ることは大切ですが、知財の重要性を広めるために知財のあるあるを漫画化したらどうでしょう?

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