IPRは特許クレームを無効にするために広く使われている手続きです。また、IPRで特許クレームを無効にする理由のほとんどが自明性(Obviousness)に関するものです。自明性は主観的なコンセプトで、先行例文献を合わせることで、発明が自明か?という問題は、長い間議論されている問題です。実に、特許の長い歴史の中で、“teaching,” “suggestion,” or “motivation” (TSM) testや最高裁のKSR判決における“Obvious to try” など様々な考察点があります。
ここで問題になるのが、そのような考察点をすべて考慮すると27点ものポイントを考慮しなければなりません。そうなってくると争点がまとまらなくなり、IPRなどの手続きでは行政判事からいい印象は得られません。
主張を3分割する
IPRを成功に導くには、形式的に27点ものポイントを網羅するのではなく、以下の3つに分け、以下の順番に従って主張を行うことが大切です。
まず各案件ごとに重要な点(What)について話します。その次は、whyです。この点についてはTSMテストを駆使して、なぜ先行例文献を合わせることが妥当を議論します。そして、最後にHowで、どのように先行例文献を合わせるかという説明に入ります。
What:
問題になっているクレームがどのようなものか(all the necessary matters of describing what the claims in dispute are about)、どのようにクレーム解釈をするべきか( what interpretation the claim terms are to get,)、先行例文献がどのようなことを開示しているか(what the prior art references disclose)、スキルレベル( what the level of skill was)、客観的に考慮すべき証拠は(what is the evidence of objective considerations)、当事者間の問題(what is in controversy between the parties)などがこの部分で話されるべきです。
Why:
TSMテストに関わることがらがここで詳細に議論されます。なぜ先行例文献にteaching, suggestion or motivationが存在するのか(why there is a teaching, suggestion, or motivation in the prior art)、なぜそのようなteaching, suggestion or motivationが先行例文献を合わせることにつながるのか(why a teaching, suggestion, or motivation would have caused a combination of the references)、なぜ成功が期待されるべきか( why there would have been an expectation of success)、なぜ組み合わせは後知恵ではないのか(why the combination is not a result of hindsight)などがこの部分で話されるべきです。
How:
そして最後に上記の2つほど重要ではないのですが、Howに移ります。このHowの部分で、どのように先行例文献を組み合わせるのかが説明され、主張が終わる形が自然です。もし、組み合わせる文献に対する関係性の欠陥、teaching away、その他、主張する組み合わせに対する反対論が考えられる場合、この部分で対応します。
まとめ
このように主張を3分割することで、説得力が高い主張を行うことができます。ただ単に自明性に関するポイントを永遠に語ると、主張がブレてしまったり、行政判事の心証を損ねてしまいます。
ここで紹介した方法では、TSMテストに注目しましたが、KSR判決による考察も案件によっては需要です。
しかし、論点を3つのポイントにまとめ、論理的に主張することはIPRを成功するために大切なポイントなので、IPRで特許クレームの無効を主張する際は、What, Why, and Howというフレームワークに沿って主張を展開していくことをおすすめします。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Charles W. Shifley. Banner & Witcoff Ltd (元記事を見る)