Court of Appeals for the Federal Circuit(略してCAFC、アメリカ連邦巡回区控訴裁判所)は、2017年、 Arctic Cat Inc. v. Bombardier Recreational Products Inc. において、特許表示(Patent Marking)の重要性を再提示した。
特許表示(Patent Marking)— 米国特許法35 U.S.C. 287に明記。特許を実施している製品に対象特許の表示がされていないと、損害賠償は侵害者が問題になっている特許を実際に知った(Actual Notice)時から計算される。このような場合、侵害を示すレターなどが送られたタイミングがActual Noticeとして扱われる場合が多い。しかし、対象製品に特許が表示されている場合、見なし通知(Constructive notice)がなされたとみなされ、損害賠償の期間をActual Noticeの期間から遡り、より多くの賠償金を得ることができる。
このArctic Cat事件では、問題になっている特許はホンダにライセンスされていた。そのライセンス契約において、ホンダには「ライセンスを受けた特許の表示(Marking)の義務はない」と明記されていた。
この条文が後に特許権者Arctic CatのActual Notice以前の損害賠償を得る上で大きな問題になった。
AIAによる特許法改正以前、特許表示の条件を満たすには、対象製品の金型などを変えて、製品に特許番号を明記する必要があった。このような作業は、新たな権利を獲た場合、逆に権利が満了、または、無効になった特許等が出た場合にそのような特許を加えたり削除したりという手間があった。
しかし、AIAで、35 U.S.C. 287が改正され、ウェブサイトを使ったバーチャル特許表示 (virtual patent marking)が可能になった。このことにより、対象製品に関する特許に変更があった場合(つまり、新たな権利を獲た場合、逆に権利が満了、または、無効になった特許等が出た場合)、対象商品に書かれる表示を変えず、ウェブサイトの情報を更新するだけで35 U.S.C. 287を満たし、損害賠償の期間をActual Noticeの期間から遡り、より多くの賠償金を得ることができるようになった。
今回問題になったArctic Catの特許は、AIA以前のものなので、このバーチャル特許表示は適用されないが、今日のAIA後の世界ではバーチャル特許表示は重要になってくる。
コメント: 元記事には、実際に企業がどのようにバーチャル特許表示を行っているか幾つか参考にできるサイトを掲示しているので、参考にしてみてください。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Bryan K. Wheelock. Harness, Dickey & Pierce, P.L.C.(元記事を見る)