判例に見る正しいバーチャルパテントマーキングの方法

バーチャルパテントマーキングを使うことで、実際の製品に特許番号を印刷する必要なく過去分の損害賠償を請求するための公への適切な通知をすることができますが、適切な形で特許を表示していないと、公への適切な通知がされていないと判断される可能性があります。

過去分の損害賠償を得るには事前に公に適切な通知をする必要がある

特許侵害による賠償金を得るためには、公に適切な通知を与える必要があります。適切な通知がなされていない場合、訴訟で訴えるなどの手続きが開始される以前の侵害については賠償金が得られない可能性があります。

特許表示とその問題点

そのため、様々な企業は製品に使われている特許番号などを印刷していますが、製品や特許によっては製品に直接特許番号を表示することが難しい場合があります。そのため、AIAにおける特許法改正の際に、バーチャルパテントマーキングというシステムが可能になりました。

バーチャルパテントマーキングの条件

製品にバーチャルパテントマーキングをおこない公に適切な通知を与えるためには、1)どの製品が特許で守られているのか、2)どの特許が製品をカバーしているのかについて、ウェブサイトで特許化された製品を特定し、さらに、明確にどの特許(特許番号で特定)がその製品を保護しているのかを特定する必要があります。

判例では表示が不適切と判断

最近の判例Manufacturing Resources International, Inc. v. Civiq Smartscapes LLC (US District Court for the District of Delaware; Civil Action No. 17-269-RGA)を読み取ることで、適切なバーチャルパテントマーキングのポイントを知ることができます。

この判例で、裁判所は特許権者が適切な特許表示を製品におこなったかが問題になりました。このケースにおいて、特許権者は、製品に’patent’という表示とウェブサイトのアドレスを表示していただけでした。また、サイトには特許が羅列して表示されているだけで、製品と特許の関連性を明確に表すようなものではありませんでした。

そのため、裁判所はこのようなバーチャルパテントマーキングでは公に適切な通知をする役割を果たしていないので、侵害を疑われた被告は実際に訴訟の申し立てを受け取るまで侵害の通知を受け取っていなかったとして、訴訟が起こされる以前に起きた侵害に関しての賠償金を認めませんでした。

まとめ

バーチャルパテントマーキングを適切に表示するためには、どの製品が特許で守られているのか、また、どの特許が製品をカバーしているのかについて明確に示す必要があります。しかし、適切に表示していれば、訴訟前の賠償金も得られるので、率先してバーチャルパテントマーキングに取り組むべきです。製品や特許が多い場合でも、まずは主力製品のバーチャルパテントマーキング化を進めていくことをおすすめします。

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:Peter Malen. Workman Nydegger(元記事を見る

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