マシーンラーニングに関する特許は有効か?

マシーンラーニングはAIに関わる重要な技術ですが、特許の有効性については今後大きな議論になりそうです。Alice判決によって枠組みが作られた特許適格性の問題が今後どうマシーンラーニングやAIの分野に適用されるか注目です。

ソフトウェアに関連事業をもっていてAI関連サービスを提供する企業(つまりサービス提供者)は、特許訴訟のリスクを見極めるためにも、一度関連技術に関する特許調査をするといいかもしれません。また、AIを活用して事業の効率化を図ろうとする企業(つまりサービス利用者)は、提供先が他社特許を侵害していないか確認するべきです。

新しい振興技術にあたるマシーンラーニングに関する特許はまだ数が少なく、そのため訴訟もまれです。しかし、今後は各企業の勢力争いが加速するにつれて、特許訴訟が増えることが予測されます。その訴訟で問題になる大きなテーマが特許の有効性、特に特許適格性(Patent eligibility )に関する問題です。

今回取り上げた訴訟PurePredictive, Inc. v. H2O.AI, Inc.は、地裁での判決が下され、現在CAFCに上訴中です。特許権者のPurePredictiveも、被告人のH2O.AIもマシーンラーニングに関するサービスを提供している同業者です。

被告人のH2O.AIは、侵害のクレームに対して、特許適格性のなさをベースに特許の無効を主張します。

H2O.ai argued that the claims “are directed to an abstract mathematical process for testing and refining algorithms,” characterizing the ’446 patent as “an attempt to monopolize the use of basic mathematical manipulations without reference to any specific implementation, application, purpose, or use.”

地裁判事は、最終的にこの主張を受け入れ、対象特許には特許適格性がないことを示しました。

Judge Orrick turned to the patent specification’s description of the invention as a “brute force, trial-and-error approach” that could “generate a predictive ensemble regardless of the particular field or application.” This led Judge Orrick to conclude “that this process is merely the running of data through a machine,” and that the claims “go to the general abstract concept of predictive analytics rather than any specific application.”

面白いことに訴訟のきっかけは、H2O.AIがOpen sourceとしてGetHubに公開していたコードをPurePredictiveが調べたことでした。自社のコードをOpen sourceとして公表することのメリットも多くありますが、他社が簡単に特許侵害の可能性を調べることもできてしまうので、公開するか否かは知財のリスクも考慮する必要があります。

元記事の著者の1人であるLauren Hockett弁護士は、特許出願系の特許弁護士で、最新のロボティクスやマシーンラーニングなどの技術に特化している人です。特に、最新技術の場合、ちゃんとした特許明細書を書ける人材が少ないので、このように技術に特化していて、さらに法律の面でも判例をよく知っている人に明細書を書いてもらえると安心しますね。

マシーンラーニングなどの振興技術に関する特許の基準みたいなものはまだ明確なものがありません。しかし、特許をもっているプレイヤーは市場を独占できる可能性もあります。市場が成長するなか、裁判所や特許庁が今後どのようにマシーンラーニングの分野での特許性に関する基準を作っていくのか見守っていく必要があります。

みなさんはマシーンラーニングに関する特許出願をしたことがありますか?

まとめ作成者:野口剛史

元記事著者: Lauren Hockett and Vlad Teplitskiy. Knobbe Martens (元記事を見る

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