特許庁がBerkheimer判決を受け、特許適格性(subject-matter eligibility)に関する新たなガイドラインを発表。この変更により35 USC Section 101による拒絶に対する主張が多少やりやすくなりました。このガイドラインは2018年4月19日に発行されていて、追加のクレームエレメントがよく理解されている、ルーチン化されている、通常の活動(well-understood, routine and conventional activity)なのかという点に限定されたものです。
このガイドラインメモは、 CAFC のBerkheimer v HP, Incにおける判決によるもので、その判決で、 CAFC はどのようなものがよく理解されている、ルーチン化されている、通常の活動(well-understood, routine and conventional activity)なのかという問題は事実上の問題(factual issue)であるとしました。特許訴訟の場合、事実上の問題が当事者同士の主張が食い違っている場合、summary judgment(略式判決)などにはできません。略式裁判などの早期解決手段は司法問題(legal issue)に限られていて、事実上の問題が争点の場合、(陪審員裁判の場合)公判で陪審員に事実判定を行ってもらうという形が一般的です。このような訴訟手続に関することがらが特許庁における審査に影響を与えることはめったにありませんが、今回のような裁判所による特許有効性に関する判決は、特許庁での審査基準に変更を与えることもあります。今回のBerkheimer 判決は、特許適格性(subject-matter eligibility)に関する判決で、特許庁が特許庁における審査に影響を与えると判断したため、今回のガイドラインの発行につながったと思われます。
このBerkheimer 判決以前、特許庁の審査官は、実例などを出さずによく理解されている、ルーチン化されている、通常の活動(well-understood, routine and conventional activity)という理由でクレームを拒絶することができました。実例などがない場合、そのような断定的な拒絶を覆すのは難しいというのが実情でした。しかし、今回のガイドラインにより、よく理解されている、ルーチン化されている、通常の活動(well-understood, routine and conventional activity)という理由でクレームを拒絶する際、以下の4つのどれかを示す必要があります。
- a citation to an express statement in the specification or to a statement made by an applicant that demonstrates the well-understood, routine and conventional nature of the claim element; (出願人の明細書や発言)
- a citation to a Federal Circuit decision noting the well-understood, routine and conventional nature of the claim element; (CAFCの判例)
- a citation to a publication that demonstrates the well-understood, routine and conventional nature of the claim element; or (出版物)
- a statement that the examiner is taking official notice of the well-understood, routine and conventional nature of the claim element. (審査官の公的な告知。しかし、この場合、出願人がMPEP section 2144の下、理由を追求することができるので、最終的に、審査官は上記3つのどれかで自身の主張をサポートする必要があります。)
また、 CAFC はただ特定の事実が先行例文で開示しているだけで、よく理解されている、ルーチン化されている、通常の活動(well-understood, routine and conventional activity)と証明できるわけではないと忠告しています。つまり、この発言から、単一の先行例文のみではなく、その他の証拠や証言なども合わせて、特定の行動がよく理解されている、ルーチン化されている、通常の活動(well-understood, routine and conventional activity)だと主張する必要があると思われます。
さて特許庁での審査に話を戻しますが、このBerkheimer判決後の特許庁による特許適格性ガイドラインを受け、出願人はいままでよりも比較的簡単によく理解されている、ルーチン化されている、通常の活動(well-understood, routine and conventional activity)に対する反論ができるようになりました。この変更により、今後の35 USC Section 101による拒絶の減少とともに、理由が明確な35 USC Section 101による拒絶が増えてくると思われます。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者:Warner Joseph Delaune. Baker Donelson Bearman Caldwell & Berkowitz PC (元記事を見る)