電子署名を利用した米国特許庁の書類への署名

USPTOに提出するほとんどの書類は電子署名に対応しています。日本の出願人が署名する機会は少ないと思いますが、リモートワークにおけるペーパレス化は重要な取り組みなので、USPTOにおける電子署名(USPTOではS-signatureと呼ばれています)について説明します。

私たちはデジタル時代に生きており、多くの企業がペーパーレス化やペーパーライト化を進めています。そのため、文書署名の世界は進化しており、紙を印刷したり、コピーしたり、スキャンしたりすることなく、文書に署名したいと考える人が増えています。現在では、DocuSign®のような多くの電子署名サービスが提供されており、重要な法律文書でさえも電子的に署名されるようになってきています。

特許や商標の出願をより便利にするために、米国特許商標庁(USPTO)は、文書の電子署名を可能にする規則を採用しています。宣言書(Declaration)のような重要な書類であっても、電子的に署名することができます。しかし、USPTOは、あなたの文書が適切に受け入れられるようにするために、いくつかの条件を設けています。

電子署名(USPTOではS-signatureと呼ばれています)とは、手書きの「濡れた」署名(“wet” signature)またはそのコピー以外の署名のことです。これには、タイプされた署名だけでなく、DocuSign®のようなサービスで提供される手書き署名の画像も含まれます。特許出願人によるS-signatureの要件には、以下のようなものがあります。

  1. 署名は、文字、アラビア数字、句読点(例えば、スペース、カンマ、ピリオドなど)のみで構成されていること。
  2. 署名者の氏名は、署名者を合理的に識別できるように、署名者の氏名を明記し、署名の近くに記載すること。
  3. S-signatureは、署名者が個人的に、スラッシュマーク(/)の間に置く必要があります。

この最後の要件は、クライアントや特許の専門家にとって最も直感的ではない要件です。このルールは直感的ではありませんが、USPTOの適切なS-signatureの要件であることに変わりはありません。このため、クライアントにはこのルールに厳密に従うことをお勧めしています。

まとめ:ワークフローの混乱を最小限に抑えつつ、この要件を満たすためには、署名行にスラッシュマークをデフォルトで追加することをお勧めします。そうすれば、各署名者は適切なスラッシュマークの間に電子署名を挿入するだけで済みます。また、USPTOはスラッシュマークの間に「濡れた」署名(“wet” signature)を認めているため、署名者が従来の方法で文書に署名する場合でも、この方法は問題なく機能します。

解説

日本の出願人が直接USPTOに提出する書類にサインする機会は少ないと思いますが、S-signatureの条件は知っておくと便利です。

上記の説明はすべて納得いくと思いますが、あえて補足すると、3つ目の条件は /Koji Noguchi/ というようにスラッシュマーク(/)の間に署名をする必要があります。

もう16年前?にUSPTOがS-Signatureの正しい使い方について具体的な例を挙げて説明している資料があったので共有します。参考にしてみてください。

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まとめ作成者:野口剛史

元記事著者:M&B IP Analysts, LLC(元記事を見る

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