特許庁が再びAI発明への意見募集を始める

米国特許商標庁(USPTO)は2月14日、人工知能(AI)技術の現状と発明者問題に関して、5月15日までに関係者から意見を求める通知を連邦官報に掲載しました。これは、AIがイノベーション・プロセスにおいてより大きな役割を果たしていることを認識するもので、USPTOはAIのイノベーションにインセンティブを与え、保護するための意見を求めています。この通知では、AI、特許、所有権などに関連する一連の質問が提示されています。

特許庁がAI発明に関する意見を募集するのは今回で2回目

USPTOがAI発明についてパブリックコメントを求めるのは今回が初めてではありません。2019年8月、特許庁は、非自然人による発明的貢献を考慮するために現行法を改正する必要があるかどうかについて意見を求めました。これらのコメントをもとに、2020年10月に “Public Views on Artificial Intelligence and Intellectual Property Policy “と題する報告書が発行されました。当然のことながら、コメントは人間の貢献なしになされた発明に関する賛否両論をカバーしています。

そして、2022年6月、USPTOは人工知能と新興技術に関する最初の会議を開催しました。ここでも、AI単独でなされた発明、あるいはAIを人間との共同発明として特許可能な発明が存在し得るかどうかについて議論がなされました。

今回の要請は、ターラー博士がDABUS(Device for Autonomous Bootstrapping of Unified Sentienceの頭文字をとったもの)と呼ばれるAIシステムを唯一の発明者とする特許出願を行ったことに着目したものです。(OLC関連記事)。

この特許出願は、発明者の名前がないことを理由に特許庁に却下されています。しかし、Thaler博士は裁判所に訴え、バージニア州東部地区(Thaler v. Hirshfeld, 558 F.Supp.3d 238 (E.D. Va. 2021))、連邦巡回控訴裁判所(Thaler v. Vidal, 43 F.4th 1207, 1210 (Fed. Cir. 2022) )で、発明者は自然人でなければならないと判断され、人間がAIの支援を受けて作った発明は特許性があるかどうかに関しては決定せず、Thaler博士は敗訴しています。Thalerは米国最高裁に再審査を申請しているが、同裁判所はこの事件を受理するかどうかをまだ決定していません。

AI技術の向上が特許法や著作権法の法改正のきっかけになる?

特許法や著作権法は、AIが存在するずっと前に作られたものです。そのため、AIのような新しい技術は現在の法律にはうまく適合しないという意見もあります。

2022年10月、USPTOと米国著作権局は、ティリス上院議員とクーンズ上院議員から、将来のAIのイノベーションと創造にインセンティブを与えるための法改正を検討する国家委員会を設立するよう要請されました。AIによる創作物に関する特許法や著作権法の不確実性は、米国憲法第8条第8項に規定される科学の進歩と有用な芸術を促進するために、法律とその方針を見直す必要性を指摘しています。

参考記事:Patent Office (Again) Seeking Comments on AI Inventions

ニュースレター、会員制コミュニティ

最新のアメリカ知財情報が詰まったニュースレターはこちら。

最新の判例からアメリカ知財のトレンドまで現役アメリカ特許弁護士が現地からお届け(無料)

日米を中心とした知財プロフェッショナルのためのオンラインコミュニティーを運営しています。アメリカの知財最新情報やトレンドはもちろん、現地で日々実務に携わる弁護士やパテントエージェントの生の声が聞け、気軽にコミュニケーションが取れる会員制コミュニティです。

会員制知財コミュニティの詳細はこちらから。

お問い合わせはメール(koji.noguchi@openlegalcommunity.com)でもうかがいます。

OLCとは?

OLCは、「アメリカ知財をもっと身近なものにしよう」という思いで作られた日本人のためのアメリカ知財情報提供サイトです。より詳しく>>

追加記事

chess-strategy
再審査
野口 剛史

新事実で否定されていたIPRが開始される

1回目のIPRは却下されてしまいましたが、新事実の影響で、2回目のIPRが開始されるという面白いことが起こりました。IPRの開始は特許訴訟における重要なポイントなので、この判例は注目したいところです。

Read More »
rejected-trash
再審査
野口 剛史

並行訴訟の非侵害確定でIPRの控訴が認められず

申立人によるIPRの控訴は「当たり前」のように行われていますが、特殊な事実背景によっては、IPRの控訴が認められない可能性があります。今回紹介する判例では、並行している特許訴訟における非侵害の判決と、その後の特許権者による非侵害判決の非控訴によって、IPRの控訴ができなくなってしまいました。

Read More »