現在はUSPTOに出願する際、MicrosoftのWordフォーマットであるDOCXフォーマットでも、PDFでも出願が可能です。しかし、USPTOではDOCXフォーマット以外の出願に$400の追徴金を請求するような動きがあるようです。今回は、USPTOによるDOCX出願がどのように行われるべきか面白い提案があったので紹介します。
DOCX出願はまだ導入すべきではない
知財関連ブログのPatentdocsやCarl Oppedahl氏による記事を見てみると、特許庁によるEFS DOCX出願がまだ未完成なことがよくわかります。そのため、このままDOCXフォーマット以外の出願に$400の追徴金を請求するような動きがあると、知財関係者の間でおおきな混乱が起こるでしょう。
特許庁がDOCX出願を進める理由
DOCX出願がちゃんと機能すれば、特許庁での効率の向上に大きく貢献します。例えば、PDF形式で出願された明細書をOCRで文字おこしするよりも、DOCX出願であれば、そのようなプロセスをしないで、原文をそのまま用いて検索や分析ができます。
DOCX出願は、次世代の検索、分析、自動化ツールなどを可能にするため、多くのステークホルダーに大きな利益をもたらすと期待されていますが、導入にはまだまだ課題も多いのが事実です。
特許出願には決まったフォーマットがない
DOCX出願が上で紹介したようなテキスト検索・分析を可能にするフォーマットにちゃんとなっているかを保証することはとても難しいです。特許出願を行うそれぞれの代理人は独自のフォント、フォントサイズ、段落、ラインブレーク、見出しなどを用いています。さらに、式やシークエンスリストなどを加えると更に情報が複雑になり、データの扱いが難しくなります。
つまり、DOCX出願を成功させるには、出願を予定している明細書がテキスト検索・分析を可能にするフォーマットであることが簡単にわかるよう、ユーザーに使いやすいValidationツールのようなものが必要になってきます。
Validationルールの公開とsource codeの公開
Validationツールを効率よく開発しバグを早期からなくしていくには、USPTOがValidationのルールを公開し、ツールのsource codeを公開することが重要になります。そうすれば、エラーメッセージが出た際に、問題の特定が容易になります。そして、バグの取り除き作業も効率よくすすみ、ルールも使うユーザーが関わることでより実用的なものにすることができます。
さらにいいのは、ルールとコードの公開と共に、DOCXのValidationツールを独立したウェブサービスとして提供することです。そうすることによって、ドラフトの途中段階でもフォーマットがDOCX出願基準に満たしているかをチェックでき、出願の手続きを始めた時点で始めてDOCX出願に関するエラーの対処を行うという手間を回避することができます。
このようなツールがあれば、たとえば、事前にDOCX出願の基準を満たしているテンプレートを作成することもできます。
まとめ
特許庁における効率化は大切なものです。しかし、準備を万全にしないまま新たな手続きを開始してしまうと混乱が起きてしまいます。今回のDOCX出願も成功すれば効率化や次世代化に大きな一歩をもたらしますが、そのためにも、Validationルールの公開とsource codeの公開など導入までの作業をステークホルダーと一緒になって行っていく必要があると思います。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: Chad Gilles. BigPatentData Inc.(元記事を見る)