米国第9巡回区控訴裁判所は、商標製品が新製品に組み込まれた場合、先売り法理(first sale doctrine)が適用されるとし、原告に有利な略式判決の許可を取り消しました。どのような開示が適切なのかは差し戻された知財で議論されますが、商標について正規ライセンス品を組み込んでいる商品を販売知ているのであれば、この判例は注目する価値があります。
判例:Bluetooth SIG Inc. v. FCA US LLC, Case No. 21-35561 (9th Cir. Apr. 6, 2022) (per curiam)
認定を得た部品を含む製品に対し別途商標ライセンスが必要なのか?
Bluetooth SIG は、Bluetooth 技術の規格を管理しています。SIG は以下の商標を所有し、製品メーカーにライセンス供与しています。
Fiat Chrysler Automobiles (FCA) は、Bluetooth搭載ヘッドユニットを搭載した自動車を製造しており、ヘッドユニットはSIGが認定した第三者サプライヤーによって製造されていますが、FCAは自社の自動車におけるBluetooth機能を認定するための措置をとっていませんでしたが、SIGの商標をヘッドユニットや出版物に使用していました。
SIGは、Lanham法に基づき、商標権侵害でFCAを提訴。FCAは弁護側として、先売り法理(first sale doctrine)を主張しました。この法理は、生産者がその商標製品の流通を管理する権利は、製品の最初の販売後には及ばない、というものです。例えば、生産者の商標の下で生産者の製品を在庫、展示、再販する購入者は、Lanham法に基づく商標権を侵害しません。連邦地裁は、FCAの行為は「製品の在庫、展示、再販」を超えているため、先売り法理(first sale doctrine)は適用されないとし、先売りの問題に関してSIGの一部略式判決を認めました。このことを不服にFCAは控訴します。
組み込みに関する適切な開示があれば先売り法理(first sale doctrine)の適用内
第9巡回控訴裁は、1995年にSebastian Int’l, Inc. v. Longs Drugs Stores Corp.で下された第9巡回控訴裁の判決を狭く解釈したことが下級審の誤りであると判断し、その中で裁判所は、「生産者の商標でその製品を貯蔵、展示、再販するだけの購入者は、Lanham法によって生産者に与えられる権利を侵害しないということが『初売』原則の本質」だと述べていることを明らかにしました。第9巡回控訴裁は、Sebastianにおける判決が先発売の原則の外枠を明確にしようとしたことはなく、単に真正商品の無許可の再販売を捉えているに過ぎないと指摘しました。
第9巡回控訴裁は、商標が新たな最終製品に組み込まれる部品を指すために使用される場合にも、売り手が商標製品をどのように組み込んだかを適切に開示すれば、先売り法理は適用されると説明しました。同裁判所は、1925年のPrestonettes, Inc. v. Cotyの最高裁判例を引用し、Sebastianで述べた例よりも事実上、先売り法理を拡大しています。Prestonettesでは、商標法は、製造業者が、商品を示すためではなく、商標製品が新しく変更されて提供される製品の構成要素であることを示すために商標を使用することを禁止するものではないと判示しました。
第9巡回控訴裁はまた、1998年のEnesco Corp. v. Price/Costcoにおける判例にも言及し、この判例では、不適切な梱包とされた人形を再販売した小売業者を、再梱包が開示されている限り、先売り法理が保護すると判断しています。このEnesco事件では、Price/Costcoが製品を再梱包し、その後に製品が破損したことを公衆が十分に知らされていれば、公衆は破損の原因について混乱することはないだろうと説明しました。
第9巡回控訴裁は、PrestonettesとEnescoでは、商標製品がどのように新しい製品に組み込まれたかという売り手の開示に焦点が当てられ、適切な開示がなされたかどうかが問題とされたことを指摘しました。連邦地裁はこの問題に触れていないため、同裁判所は第一審でこの問題を扱うよう下級審に差し戻しました。
参考記事:First Sale Defense Bars Trademark Infringement Where Trademarked Component Is Adequately Disclosed