特許出願でデザインの機能性が証明されてしまう

トレードドレスは機能的であってはいけません。当然、出願人はデザインの非機能性を主張しますが、同じデザインに対する特許出願からデザインの機能性が示されてしまうことがあります。1つの製品を特許やトレードドレスなど複数の知財で守る場合、準備の段階で明確な保護の棲み分けをおこない、お互いが干渉しないような形で出願する必要があります。

判例:In re Reelex Packaging Solutions, 2020 WL 6495532 (Fed. Cir. November 5, 2020).

機能性があるものはトレードドレスで保護できない

トレードドレスは商標による保護の1つで、そのデザインが使用されている限り特徴的な製品デザインを継続して保護できます。特許のように「有効期限」が無く、更新し続ければ保護が継続するので、知財資産として高い評価を受けています。

しかし、デザインが全体として機能的なものである場合、トレードドレスとして保護することはできません。

今回の連邦巡回控訴裁判所(CAFC)の判例は、特許保護を得るために製品の機能性を示したことをきっかけに、製品の外観や使用感に関するトレードドレス保護を取りそこねてしまいましたケースです。

特許出願から機能性が指摘されトレードドレス出願が拒絶される

Reelex Packaging Solutions, Inc.の「Reelex ボックス」は、ケーブルやワイヤーを梱包するためのものです。Reelexは箱のデザインが特徴的であると主張し、2つのデザインをトレードドレスとして登録するためにUSPTOに申請を行いました。

しかし、デザインは全体としては機能的であるため、法的にトレードドレスとして保護することはできないという理由で却下されてしまいました。USPTOの決定は、Reelexの特許出願と会社の広告に基づいています。例えば、特許の出願において、Reelexは、好ましい実施形態の説明において、製品の機能性に関する記述をしていました。また、広告ではボックスに含まれるケーブルやワイヤーが絡まることなく払い出される「絡まりのない技術」を特徴としていると説明していました。

TTABでもCAFCでも拒絶は覆らなかった

Reelex は、TTAB に審査官の拒絶を不服として上訴しましたが、TTAB は審査官を支持。その後ReelexはCAFCに控訴しますが、TTABの法的決定と実質的な証拠のための事実関係の調査結果を審理した上で、これを支持しました。

機能性に関する4つの要素が決定打に

CAFCではIn re Morton-Norwich Productsで示された機能性に関する4つの要素を考察しました。

要素の第1は、デザインの実用的(機能的)な利点を開示している特許の存在

Reelex社は箱のデザインについて5件の特許を取得しており、TTABはこれらの特許には機能性を重視した開示が含まれていると判断しました

これらの5つの特許で開示されている内容を整理したあと、CAFCはTTABの機能性分析に誤りはないと判断し、Reelex社の特許はボックスのデザインが「その機能によって規定されている」ことを示しているというTTABの決定は、実質的な証拠によって裏付けられていると判断しました。

第2の要素は、出願人の広告がデザインの実用的な利点を訴求しているか

この第2の要素に関しTTABは、Reelexの広告がケーブルやワイヤの「絡まりのない」ディスペンシングのための8の字型パターンを明示的かつ反復的に誇張していることを認めたことを指摘しました。

デザインの実用上の利点である「リサイクル性、スタッキング、出荷、箱の保管」に優れていることをアピールした広告は、機能性を示すものです。この要素においても、CAFCはTTABの判断は実質的な証拠によって支えられていると判断しました。

第3の要素は、代替設計が存在するか

この要素に関してCAFCは、TTABが「その他の考慮事項」に基づいて機能性が認められた場合には、この要素を考慮する必要はないとしたのは正しいとの見解を示しました。

第4の要素は、意匠が比較的単純な製造方法かあるいは安価な製造方法で作られたかどうか

他の要素の分析からTTABはすでに正しい判断を下したと結論付けたため、CAFCは第4の要素について議論する必要はないと考えたようです。

特許とトレードドレスの境目を明確にすることを意識して出願をするべき

今回のIn re Reelex 事件の教訓は、特許とトレードドレスの境界線が重なるような場合には、特許と商標出願の両方について慎重な計画を立て、両方の境目が明確になるように明細書を作成することが不可欠であることを物語っています。トレードドレス出願では、特許で機能的であると主張されていない非機能的な要素に焦点を当てて、In re Morton-Norwich Productsの4つの要素における分析でも機能性を示さないような特徴を示す必要があります。

参考記事:Federal Circuit Holds Trade Dress Applications Tangled Up by Utility Patent Filings by Yinfei Wu, Elizabeth D. Ferrill and Margaret A. Esquenet. Finnegan, Henderson, Farabow, Garrett & Dunner, LLP

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