効率化のやりすぎは問題?商標出願の件数が多すぎてUSPTOに業務停止処分を言い渡される

米国特許商標庁(USPTO)は、今年初め、短期間に考えられないほどの大量の商標出願を行ったとしてニューヨークのWeibo Zhang弁護士に対して業務停止処分を下しました。より短時間で質の高い業務をおこなうようにすることは大切ですが、代理人業務を提供し、相談することを怠ったり、無許可の法律業務を支援していたと見なされると問題になるので、業務効率しても弁護士が十分なサービスを提供できる仕組みが大切になってきます。

1人ではとても対応できない量の出願

Weibo Zhang氏は、2020年から2021年の間にUSPTOに18000件以上の商標出願を行ったことが発覚し、少なくとも90日間のUSPTOでの業務停止処分を受けました。Attorney of Recordとして記載された被告は、2020年に約8500件、2021年に約9800件の出願を行っていました。2020年の出願のうち3000件は2020年12月に出願されており、2020年12月31日だけで350件以上の出願が行われていました。

「自分」が仕事をしないスキーム

このように大量の出願ができた理由には、米国商標出願をしようとするさまざまな外国事業体の代理人である多数の異なるエージェントと仕事をしていたからのようです。海外の代理人は、あらかじめ記入された出願書類をZhang氏に提出し、Zhang氏は、オフィスアクションが海外の代理人に直接送られるを設定する。そして、代理人は、応答が必要であるかどうかについて、出願人と相談する。応答が必要な場合は、代理人が自分でドラフトを作成し、応答者に送付して提出するというスキームだったようです。

アメリカの弁護士は商標出願において中身を確認する必要がある

USPTOは、膨大な数の出願を行ったため、USPTOが要求する出願前の商標出願のアメリカの弁護士による審査はあり得ないと裁定しました。また、USPTOは、提出された標本(specimens)が真正かどうか、また提出された標本が商業的に使用されている商標を示すかどうかを、Zhang氏が判断することができなかっただろうと判断しました。

さらに、調査に協力する一方で、Zhang氏は、代理人に49件の商標出願の記録弁護士として署名させ、Zhang氏が出願を確認することなくこれらの出願が行われたことも認めました。

これらの調査結果から、USPTOは、Zhang氏が以下のような複数の規則違反を犯したと判断しました。

  • クライアントに代理人業務を提供し、相談することを怠ったこと
  • クライアントに問題の状況について合理的に情報を提供することを怠ったこと
  • 無許可の法律業務を支援したこと
  • 不正な行為に従事し、故意に法廷に虚偽答弁をしたこと、など

また、Zhang氏はこのスキームで75万ドル近くを稼いだと推定されています。また、Zhang氏がUSPTOでの業務に復帰するためには、請願書を提出する必要があるとのことです。

過剰な商標出願に対する注意

今回のニューヨークのZhang弁護士は、適切な審査や代理を行わずに18,000件以上の商標出願を行ったとしてUSPTOはこの弁護士を処分しました。特にUSPTOが問題視したのは、弁護士は提出された標本(specimens)を適切に審査しなかったこと、適切な代理を行うことができなかったこと、そして、無許可の法律業務を支援したことです。

これらは人的には考えられない量の出願から推測され、調査の結果、その実態がわかりました。効率化を行いより高いサービスを短時間で行うことは弁護士として大事ですが、通常ではありえない商標出願件数を出してると、USPTOから疑問視されるかもしれないので、気をつけましょう。

参考記事:The USPTO Knows If You File Too Many Applications

追加記事

特許において、クレームの限定事項が明確に記述されているかどうかは、特許の有効性を左右する重要な要素です。今回、Maxell, Ltd.対Amperex Technology Limitedの判決は、特許クレームの解釈において、限定事項間の表面上の矛盾をどのように扱うべきかという問題を浮き彫りにしました。本文では、この重要な判決を深堀りし、一見矛盾すると思われる限定事項が、実際には特許の不明瞭性(Indefiniteness)を生じさせない理由について探求します。特に、連邦巡回控訴裁判所(CAFC)がどのようにこれらの限定事項を同時に満たすことが可能であると見做したか、その解釈の根拠と、特許クレームを起草する際の実務上の教訓に焦点を当てて考察します。
特許法における「組み合わせの動機」(Motivation to Combin)の概念は、発明が発明された時点でその分野の通常の技術者(PHOSITA)にとって自明であったかどうかを判断する上で不可欠な要素です。自明性の問題は、新しい発明が既知の技術要素の単純な組み合わせに過ぎないのか、それとも特許に値する独自の技術的進歩を表しているのかを区別するために重要です。このブログ記事では、特許請求の自明性を評価する際に中心となる「組み合わせの動機」の概念と最高裁判決であるKSR判例を解説し、Virtek Vision 対 Assembly Guidance Systemsの事件を例に、実際の訴訟におけるこの概念の適用方法について掘り下げます。
先月、米国特許商標庁(USPTO)が「Means-Plus-Function」に関するメモランダムを発行し、審査官に最新ガイダンスを提供しました。その内容は実務における大きな変更を意味するものではなく、既存の法的枠組みの下でより明確な指針を提供することを目的としています。しかし、このタイミングにおけるガイドラインの発行は、35U.S.C.112条(f)に基づく一風変わったクレームの形式であるMeans-Plus-FunctionがUSPTOにおける特許審査で注目されていることを示しており、改めてガイドラインに沿った適切なクレームドラフティングが求められることを意味します。