特許権者が特許購入前に行った特許分析に関する書類をThe Attorney-Client Privilege とAttorney Work-Product Doctrineの対象としてDiscoveryにおけるdocument productionを拒否。地裁は少なくとも一部の書類は保護されるべき書類とし、特許権者の主張を(一部)認める形になりました。
背景
Acaciaが第三者から特許を購入する独占オプションを所有しており、Acaciaの子会社であるLimestone Memory Systemsがそのオプションの元、特許の権利を取得。その後、LimestoneはMicron Technologyを特許侵害でCentral District of Californiaにおいて訴えます。
その訴訟のDiscoveryにおいて、AcaciaとLimestoneが特許購入前に行った特許分析に関する書類がDiscoveryのdocument productionの対象になるかという問題に対してLimestoneとMicronの間で見解が異なり、最終的には地裁判事の判断を仰ぐことになりました。
Attorney-client privilege
Attorney-client privilegeは、クライアントがプロの法律顧問に法的な助言を求める時に適用されるものです。この特権が適用されれば、クライアントはクライアントと法律顧問との間の機密コミュニケーションを他者に開示することを防ぐことができます。
Work‑product doctrine
Work‑product doctrineは訴訟の予測や裁判の準備のために弁護士、または、弁護士のエージェントが入手、または、準備した書類等に適用されるものです。
判決
地裁は、attorney-client privilegeで保護されるべきコミュニケーションの目的は法的な助言で無ければいけないとしました。ビジネス面でも法律面でも関わるin-house counselが法律顧問の場合、保護の対象となるコミュニケーションの主な目的(“primary purpose”)が法的な助言を得ることでなければいけないとしました。
一方で、work-product doctrineにおける保護の対象は、訴訟を予期した際に作成された書類で無ければいけないが、「訴訟を予期した」というのは総合的に判断されるべき(based on the totality of the circumstances)であり、対象書類を作成する目的は1つ以上あってもいいとしました。
地裁は、実際の証拠と照らし合わせ、特許購入の際、ビジネス面での評価も同時進行でおこなわれていたものの、主に法律上のアドバイスを得るために作成された書類にはattorney-client privilegeが適用されるべきであり、法的な目的と切っても切れない関係にあるビジネス上の目的のために作成された書類にはwork-product doctrineが適用されるべきとしました。
実際には、AcaciaはNon-practice entityのため、Acaciaの外部弁護士が特許取得の際におこった分析は、Acaciaによる将来的な権利行使の目的(つまり訴訟の予期)に関わるものだとして、work-product doctrineによる保護を認めました。
また、他のコミュニケーションについては、地裁はLimestoneに追加の情報を求め、提供された情報によって、1つ1つのコミュニケーションがattorney-client privilegeかwork-product doctrineで保護されるべきかを検討するという判断を下しました。
教訓
Discoveryの際にどのコミュニケーションが保護の対象になるかを決める際、裁判所はattorney-client privilegeとwork-product doctrineの適用において異なった基準を用いる可能性があります。この違いを理解して、うまく活用することが大切です。特に、商業的な要素が絡む取引や交渉の際に作られる書類等で、ビジネスの目的と法的な目的が混在する場合、attorney-client privilegeとwork-product doctrineの適用における異なる基準を理解しておくことはとても重要です。
まとめ作成者:野口剛史
元記事著者: John C. Paul, D. Brian Kacedon, Cecilia Sanabria, Clara N. Jimenez and Alexander Poonai . Finnegan, Henderson, Farabow, Garrett & Dunner LLP(元記事を見る)